5月31日(金)
事務所に鍵を下ろして、階段を下りたときだった。
「なるほどくーん、明日から里帰りしてくるね」
「え…………う、うん」
追放、じゃなかったんだろうか。でも今更そんなこと聞くのもためらわれる。……ためらっているうちに真宵ちゃんは
「じゃーね、すぐ帰れると思うから」
そう言って駆けて行ってしまった。
真宵ちゃんの立場って、どうなってるんだろう。僕は相変わらず、周りの人の事情をよく分からないことが多い。 |
5月30日(木)
「なるほどくん、神乃木さんの退院祝い、どうしようか」
「あ、なんか退院……延びるみたいだって昨日、電話があったんだ」
「……そ、うなんだ。残念だね」
でも真宵ちゃんはやっぱりすごい。すぐに
「延びたって言っても、いつかは退院するでしょ? お祝い考えておいてもいいじゃない!」
「そうだね……なにかしてあげたいよね」
「コーヒー祭りとか開催してあげようか?」
「なんで祭りなんだよ……その前にどんなイベントなんだ……?」
こうやって前向きになるところが、本当にすごいと思う。 |
5月29日(水)
「退院ねぇー、ちょっと伸びそうだよ」
病院から電話だった。
「今日、またちょっと熱が上がっちゃってねぇー。ほんのちょこっと、様子見さしてくれるかなぁー?」
「は、い……お願いします」
そう言う以外に、何ができた? |
5月28日(火)
変な夢を見た。
寝ている僕の隣に、ゴドーさんがいる。顔を近づけてくるから、
「僕、とんこつねぎラーメン、たまごつきで食べたからきっと臭いますよ」
と言った。
「気にしねえよ」
ゴドーさんはそう言って、顔を近づけてきて……。
でも僕が昨日食べたのはみそラーメンだし、たまごつけたのは真宵ちゃんだ。なんでとんこつねぎラーメンだったんだろう。冷やし中華なら食べたかったけど(まだやってなかった)、とんこつねぎラーメンか。どこから出てきたんだ?
……それよりやっぱりなにより、どうして僕とゴドーさんが……? |
5月27日(月)
昼に真宵ちゃんと一緒にご飯を食べに行ったら、偶然御剣と会った。
「あ、久しぶり」
「ム」
「あー御剣検事、ゴハンですか? だったら一緒にみそらーめん食べに行きません?」
相手が御剣でも狩魔冥でもラーメンに誘ってしまう真宵ちゃんって、すごいと思う。ある意味。
「ラーメン、か……。たまには悪くないな」
御剣にラーメンって似合わないよなぁ。なんとなく。……とか考えて、アクセサリーをしてる自分だって似合わないってことを思い出す。誰にも言われないけど……似合ってないよな、きっと。
「神乃木さん、もうすぐ退院なんですよ」
みそラーメンにたまごトッピングして、真宵ちゃんは上機嫌だ。うきうきといろいろなことを話す。
「そうか。結局見舞いにも行けずじまいで悪いことをした」
「へぇ、お見舞いに行くつもりだったんですか?」
「知らない間柄ではないしな」
退院祝いくらいは用意したいと言って、御剣は困った顔をした。
「……何を差し上げたら、迷惑でないだろうか」
「贈る気持ちが大事なんだから、何をあげても迷惑なんてないと思うよ、きっと」
僕がそう言うと、
「ム、そうだろうか」
考え深げにみそラーメンの汁を見つめている。こういうことに不慣れなんだろうか。悩む御剣はちょっとかわいかった。 |
5月26日(日)
恥ずかしいなあ、もう。
ゴドーさんのお見舞いに行く→→→→→
※ほのぼのSS(ちょっと不健全) |
5月25日(土)
「お見舞いに来ましたー! 元気ですか?」
真宵ちゃんと一緒にゴドーさんのお見舞いに行った。
「元気なのがきやがった」
「神乃木さんがいないと心細くて。早く退院してくださいね」
先生の話では、もう退院してもよさそうだという。退院の準備をしておこう。
「結局何にも持ってこなかったなー。あのね、神乃木さんにCDでも持ってこようと思ってたの。音楽の趣味がわかんなくて何も持ってこ来れなかったんだけど」
「音楽かい? ココじゃ好みの音楽を勝手にかけるわけにはいかねえしな」
「イヤホンでもダメなんですか?」
「どんな美人でも、耳元に張り付いて年中離れねぇようじゃ、恋人だって逃げちまう。愛はここぞって時にささやくからこそ、心に響くんだぜ」
「くうううぅ〜〜〜っ! 言葉の意味はわかんないけど、とにかくすごい迫力だねぇっ!」
「そ、そうだねぇ」
ゴドーさんは毎日、何もしないでぼんやりしていた。僕がいつ行っても、そうだった。本が読めないのは分かるけど、テレビもラジオも音楽も、なかった。ひょっとして体に障りがあるのかもしれない。
早く退院できるといいな。 |
5月24日(金)
僕がばたばたしているうちに、春美ちゃんは里に帰った。ちゃんと送ることも、慰めることもできなかったのが悔やまれる。
「なるほどくん、神乃木さんのお見舞い行ってきなよ。あたし、留守番してる」
そうして、そう言ってくれる真宵ちゃんの優しさを受け取る資格は、僕にあるんだろうか。
結局、甘えてしまったのだけれど。
「お、来たな。仕事はいいのかい?」
にやりと笑うゴドーさんにお花を渡して、にやりと笑い返す。(今日もゴーグルをしてないから、見えてないだろうけど)
「仕事、終わらせてきましたよ。ちゃんとね」
「何? 仕事が来てたってのか?」
さすがに驚いてる。(それもどうかと思うけど)
「クッ、ゴドー神乃木の「相談役」の初仕事、おあずけになっちまったみてえだな」
「そうですね、早く帰ってきてください。僕一人じゃ……大ピンチでした」
本当に、大ピンチだった。思い出すだけでひやひやする。
|
5月23日(木)
「本当に、ありがとうございました!」
石塚さんが昨日のお礼を持ってきた。宝石商の石塚さんは、取引のトラブルで危うく罠にはまるところだったのを、この3日間の裁判でどうにか回避することができた。
「いやー、噂に聞いていたとおり、ひやひやしましたがね。それでもやっぱり最後には私の無実を立証してくださった! ありがとうございます」
「え、ええ」
ちょっと複雑だ。崖っぷち弁護だったのは否定できないから、しょうがないよなぁ。
「こんなものしか用意できませんけど、お礼代わりです。ぜひ成歩堂先生に」
「あ、わざわざありがとうございます……」
石塚さんがそう言って僕にくれたのは、オシャレな感じの銀のネックレスだった。まさか、純銀じゃないよね。
「うちの店で作らせました。6面のWカット喜平、ホワイトゴールド。つまらない品ですが、先生に似合うかと思いましてね」
「ご、ゴールド!?」
銀色のゴールドがあるなんてことさえ知らなかった。
(でも、僕にこんなもの、似合わないよなぁ……どう考えても)
「先生、こう見えてオシャレでいらっしゃるから。そのシルバーリングに合うものを、と思ったんですよ」
「え、あ…………」
思わず顔が赤くなる。すっかり忘れてた。
僕の左手の人差し指には、1000円で矢張から買った安物(そして素人ハンドメイド)のシルバーリング(ほんとにシルバーか怪しいもんだけど)がはまっていた。
明日は、病院へ行こう。 |
5月19日(日)
いよいよ明日から審理が始まる。
準備に走り回っていて、病院へは行けなかった。 |
5月17日(金)
久しぶりの仕事だ。昨日から忙しく走り回っている。 |
5月15日(水)
「神乃木さんが入院していると聞いたのだが」
事務所に、御剣から電話がかかってきた。御剣が電話してくるなんて珍しい。
「うん。頭にちょっと怪我したらしいんだよ。縫ったみたい」
「そうか……詳しいことは知らないのだな?」
「う……ん」
今は忙しくてお見舞いに行けないから、会ったら宜しく言ってくれ、と言って御剣は電話を切った。
本当に、なにも知らなかった自分が腹立たしい。
僕はいつだって、ぎりぎりの崖っぷちに立たされるまで、本当のことを知らない。 |
5月14日(火)
春美ちゃんは真宵ちゃんの部屋に泊まったらしい。
「今日ははみちゃんと遊んでくるから、お仕事お休みさせてね」
「ああ、いいよ。遊んできなよ」
僕1人の事務所は、ずいぶん久しぶりだ。
ほんの1ヶ月か2ヶ月……誰かがそばにいてくれたってだけなのに、こんなにも寂しさを感じるものなんだ。
寂しさってのは、手に入れてたものを失うから、寂しくなるらしい。最初から何も持ってなかったら、こんな思いをしなくてすむのに。 |
5月13日(月)
「うわああああんまよいさまあああああああ!!」
午後、まったり真宵ちゃんと塩ラーメンの話をしていたら、突然春美ちゃんが事務所に駆け込んできた。
「どうしたのはみちゃん! 誰かにいじめられたの!?」
「わたくしのことなど、どうでもいいのです! それより、まよいさまは……まよいさまはあああああ……」
どうやら、真宵ちゃんが倉院の里を追放になったことを、春美ちゃんは初めて知ったらしい。それで思わず駆けつけてきたのだとか。
「ま、ま、いろいろあるからねぇ。とにかく泣かないで、はみちゃん」
「でもでも、まよいさま…………」
春美ちゃんは真宵ちゃんの腕をつかんで放さなかった。よっぽどショックだったのだろう。真宵ちゃんが案外平気な顔をしているから僕もつい安心していたけど、本当はとても大変なことなんだ。
僕は真宵ちゃんの帰る家として黙って事務所を開けておく。それが僕にできることだと思っている。 |
5月12日(日)
毎日のようにお見舞いというのもどうかな、という気はしたけど、でも平日は来れないんだからと思ってまた、お見舞い。
『入院〜? もうちょっとかかるねぇー。今月いっぱいはいてもらっちゃうかなぁー』
先生の話では、頭の怪我だから用心に用心を重ねているそうだ。……元々脳外科手術などでかなり手を入れているから、慎重な対応が必要なのだという。
「今度、何かお見舞い品持って来ましょう。そうだなぁ……音楽とか、どんなのが好きですか?」
さりげなく聞いてみる。
「何もいらねえ。使い慣れねえ気なんぞ、使わなくてもいい」
ぶっきらぼうに返される。
「でも、ひまでしょう。本とか読めないだろうし」
「まあな」
「いつも何をしてるんですか?」
ゴドーさんは僕から視線をそらして(といっても、ずっと僕の顔は見えてないんだろうけど)、うつろな目をした。
「考え事、かな」
そんな目で、毎日何時間もぼんやりとする『考え事』の内容は、いったいどんなだろう。
何だかとても、嫌な、というか、不安な、というか…………悲しい気がした。 |
5月11日(土)
一人で病院へ。
することもないけど、話すこともないけど、それでも僕はゴドーさんのそばにいたかった。
「今日はお見舞いらしく、お花を持ってきましたよ」
「へぇ、滅多なことはするもんじゃねえぜ?」
「…………微妙な言い草ですね」
ゴドーさんは最近ずっと、ゴーグルを着けていない。きっとよく見えないだろうと思って、手触りのいい花を見繕って束にしてもらってきた。
「ね、これ何の花ですか?」
ゴドーさんの骨太な指が、分厚い花びらを撫でる。
「…………ガーベラ、だな。あってるか?」
「…………ガーベラ、だと思います。……………………すみません、知りませんでした」
「クッ、答えのないクイズ、か。銘柄のわからねえコーヒーも、うまけりゃ文句はねえ」
「あ、これは? これならわかりますよ!」
僕は知ってる花があったので1本差し出した。
「…………そんなもの、触らなくても分かるじゃねえか。バラ、だ」
「いいにおいですねー。バラ」
「ああ、悪くねえ」
僕らは、ちゃんと会話もできる。それだけのことなのにどうしてこんなに嬉しいんだろう。 |
5月10日(金)
事務所は早めに閉めて、面会時間ギリギリまでゴドーさんのところにいた。真宵ちゃんは他に約束があるから来ないという。こっちにはあんまり友達も多くない真宵ちゃんに、予定があるのは僕としても嬉しい。
病室でのゴドーさんは、この間と同じように、ぼんやりと考え事をしているようにたたずんでいた。
「こんにちは、ゴドーさん」
「ああ…………アンタか、まるほどう」
「ねえ、ゴドーさん」
「どうした、まるほどう」
その繰り返し。僕は言葉が出てこないし、ゴドーさんもそこから先は問い詰めない。ただ、名前を呼んで、ただ、返事をするだけ。
僕らは、お互いの中に踏み込んでいけない。 |
5月9日(木)
「ゴドーさんって、どんな音楽が好きなのかなあ?」
真宵ちゃんが突然そんなことを言い出した。
「さあ……なんで?」
「だって、目がよく見えないんでしょ? 本が読めないなら、音楽を聴くのかなーって思って」
何だか、突き落とされたような、気が、した。
ゴドーさんは目がよく見えない。
知ってるはずなのに。知ってたはずなのに。
あの人はカラダが強くないってことも、いろいろ不自由があるってことも。
僕は気遣いの足りない人間なんだろうか。それなら、まだいい。
もしかして、そのことを忘れようとしていなかっただろうか。
平気な顔をして毎日事務所に来てくれるゴドーさんに甘えていた。きっと。
あの人はいつでも強くて、どんなことでも平気で、いつまでも事務所にいるのだと思い込もうとしていた。 |
5月8日(水)
真宵ちゃんと一緒に、お昼に病院に行ってみた。
ゴドーさんはベッドの上で体を起こして、ぼんやりと何か考えているような顔をしていた。
「ゴドーさん、こんにちは」
「あー、神乃木荘龍だー」
真宵ちゃんが、ゴーグルを着けていないゴドーさんをそう呼んだ。
「クッ、元気そうだな、お嬢ちゃん」
「ねぇねぇ、顔よく見てもいいですか? あんまり素顔、見たことなくて」
「ああ、イイ男の素顔は、見れるときに見ておけよ」
さすがに命の危険はなさそうだけど、頭に巻いた包帯の白が目に焼きついて離れない。
『ゴドーさん、カラダはどれだけ悪いんですか?』
『どれだけ動けるんですか?』
『どれだけ…………生きられるんですか………………?』
背中がぞくっとする。
「まるほどう、俺がいなくてもちゃんと事務所を守るんだぜ」
「え、あ、はい…………って、僕の事務所なんですけど……」
「クッ、保護者のいない法律事務所……大丈夫かい?」
「ぜんっぜん大丈夫じゃないです! なるほどくんはトイレ掃除ばっかりしてるし、お客は来ないし、家賃は払えないし、ゴキブリは出るし! ゴドーさんがいないと明日にもつぶれちゃいますよ!」
「真宵ちゃん……なんかいろいろ関係ないことばっかりだよ……」 |
5月7日(火)
「ゴドーさん、顔色悪かったね」
「そりゃ、けが人だしね」
「あんなに白い色してたっけ……」
「さあ……いつもゴーグルしてるし、あんまり印象がないなぁ」
ゴドーさんの「欠勤」は今日も続いている。真宵ちゃんと2人、今までどおりの事務所だというのに、なぜだか「お留守番」みたいな感じだ。
「あんなにおっきなゴーグル着けてるのに、おでこぶつけちゃうなんてね」
「家では着けてないのかもしれないよ。重そうだし」
「でも、あれないと見えないんでしょ?」
ゴドーさんの体は、どれだけ悪かったんだろう。今度ゴドーさん本人か、あるいは病院の先生か、誰でもいいからちゃんと教えてもらおう。 |
5月6日(月)
昨日、病院から電話が掛かってきて、僕は急いで自宅から駆けつけた。
「電話をもらった成歩堂です。あの、神乃木さんは……」
「やあ、君かぁー。えーと、神乃木さんとはどんな関係かなぁー?」
「えっ、ええと………………雇用主みたいなものです」
「そうか、実はねぇー」
ゴドーさんは先月末に頭に怪我をして、その傷が思ったより悪くなってしまったのだ、と先生は言った。
「怪我…………?」
「ああ、額の辺りに、切り傷がね。キッチンで転倒してぱっくりいったみたいだねぇー」
「ぱ、ぱっくり?」
「3針、縫ったよぉ。その傷がうまくなくてねぇー。まだしばらくは安静だよぉー」
そんなこと、全然知らなかった。
ゴドーさんは病室で眠っていた。起こさないようにそっと顔を見に行く。
『彼がうちに来てからこの6年間というもの、彼の「緊急連絡先」の欄はずっと空欄だったんだよぉー。
それが先月から、法律事務所の名前と電話番号を書くようになってねぇー。そうか……職場ねぇー』
ゴドーさんはゴーグルを外して、頭に包帯を巻いて、白いベッドに横たわっている。小さな寝息を立てている様子は、なんとなくゴドーさんのイメージにそぐわない。僕はそばに座って、ただじっと、ゴドーさんの素顔を見つめていた。
連絡先に、僕の名前を書いていた。
毒の眠りについてからずっと空欄だったその場所に。
『野暮用でな。今日は欠勤だ』
欠勤だ、と言ったゴドーさんの声が、頭をぐるぐる回る。
それが、昨日の話。 |
5月5日(日)
昼過ぎに、ケータイが鳴った。
病院からだった。 |
5月4日(土)
「昨日はありがとう」
さすがに反省して、御剣に電話した。
「礼より前に、侘びを言いたまえ」
電話の向こうの御剣は相変わらずの口調で、でも本気で怒ってるわけじゃないことは判った。
「ゴドーさんの裁判以来……かな」
「そうだな。彼は元気だろうか」
御剣も心配してくれる。それが何だかとても嬉しかった。
御剣は2ヶ月前、ゴドー・神乃木荘龍の裁判で、検事を務めた。弁護士は僕だ。
被告が知人であっても容赦のない御剣の攻撃に、僕はあのときかなり腹を立てていた。
でも、それが彼なりの『誠意』だったのだ、ということを教えてくれたのは、ゴドーさんだ。
「あのボウヤは、きちんと仕事してくれた。だからこそオレも、この判決を正々堂々と受け取ることができる、ってわけさ」
ゴドーさんの判決は、懲役3年、執行猶予5年。
殺人罪の中では、考えられる限り最も軽い刑量の部類に入る。
それは御剣が全力でぶつけてきた糾弾と、僕の全力の弁護が打ち出した、固い真実だ。
本気でやったから、手抜きがなかったから、それはゴドー・神乃木荘龍が犯した犯罪に対する、正当な刑量だと胸を張って言える。
「御剣のおかげで、ゴドーさんは自由に生きてるよ」
「ム、そうか。……私のおかげということもないだろうが」
照れる御剣の顔が目に浮かんで、僕は嬉しかった。
でも、ゴドーさんは元気なんだろうか。僕も気になる。
ゴドーの裁判の記録を見てみる→→→→→
※シリアスSS(健全) |
5月3日(金)
今日から3日間、事務所も連休だ。いつもなら家でごろごろするんだけど、今日は早速、真宵ちゃんに連れ出された。
「なるほどくーん、混んでなくて楽しいところ、連れてって」
「……GWに無茶言うなよ」
「でもわたくし、人がたくさんいる場所は少々、ニガテなのです……」
「はみちゃんのためにも、混んでなくて楽しいところ、連れてってよー!」
春美ちゃんも遊びに来ていた。空いてて楽しいところ……どこだ?
考えた挙句、僕ら3人はぞろぞろと遊びに出かけたのだった。
「久しぶり、御剣!」
「ム、どうした成歩堂。GWに何か事件でもあったのか?」
「いやー、検事局なら空いてるし、綺麗だし、何か楽しいコトでもないかと思ってさー」
「ここは遊ぶ場所ではないぞ!」
押しかけてはみたけど、やっぱり怒られた。でもたまたまその場にイトノコさんもいて、せっかく集まったんだからということでみんなで食事に出かけることになった。
なんか久しぶりに御剣に会ったな。元気そうだった。
|
5月2日(木)
「なるほどくーんっ! ただいま!」
今日もいつものように事務所に来てみたら、入り口の扉の前で真宵ちゃんが待っていた。
「脅かそうと思って早く来たんだけど、入れなかった。鍵、またちょうだいね」
「真宵ちゃん……」
何か言いたかったけれど、言葉にならない。
とにかく、これだけは言わなきゃいけないんだ。ずっと待ってたよ。
「おかえり、真宵ちゃん」
|
5月1日(水)
今日もゴドーさんは『欠勤』した。さすがに探りを入れずにはいられない。
「病院、ですね」
「…………白いカップに注いでも、コーヒーは闇と同じ色だ。飲み干すまで、底は見えねぇ」
「ねえ、ゴドーさん。体、大事にしてください。それで帰ってきたら僕と一度、ゆっくり話しましょう」
「…………………………ああ、そうだな」
それで電話は切れた。
|