成歩堂日記 10月

10月31日(木)

「おかしをよこせー!」
「くださいなー!」
 夕方、事務所を片付けようとしたらおかしな2人組に事務所を襲撃された。

「…………真宵ちゃん? 何してるの?」
「真宵ちゃんじゃないよ! お化けだよ!」
「春美ではありません。お化けさんなのですっ」
「クッ……いたずらされちゃたまんないぜ。なあまるほどう?」
「え、あ、ああ?」

 ええっと、あれか。ハロウィンってやつか。
 急に言われてもおせんべくらいしか出ないぞ?

「あの、おせんべでいいかなぁ?」
「クッ……せっかくかわいいお化けが遊びに来てくれたんだぜ? ケーキくらい出してやんな、所長サンよ」
「わぁ、ケーキ! あたしハトポッポの限定パンプキンアップルパイが食べたいよなるほどくん!」
「まあ、かぼちゃのケーキですか! ワタクシ、食べたことがないのです」

 むやみに盛り上がってきてしまった……。
 仕方なく事務所を出て、近所のクリームパフで限定のかぼちゃシュークリームとジュースを買ってくる。
「ただいま。これで許してよ、お化けさん」
「ハトポッポじゃないの? あ、でもこれもおいしそうvvv さっそく喰らい付くよはみちゃん!」
「ワタクシ、シュークリームもダイスキですv」
「クッ……じゃあオレはゴドーブレンドおごっちゃうぜ」
「おおっ豪華な夜だねえ!」

 夜に、突然のささやかなパーティ。こういうのも、悪くないかな。
10月29日(火)

「お疲れさんだったな、まるほどう」
「ゴドーさんのお陰ですよ」
「クッ……謙遜なんてらしくねえぜ、所長サンよ」

 ちょっとほっとしたから、ゴドーさんにおいしいご飯を付き合ってもらった。なんか、感謝の気持ちを表したくて。

 もう夜になると、外はだいぶ寒い。歩いて帰って、ゴドーさんのマンションでコーヒーを淹れてもらう。
 やっぱり、これが一番落ち着くなあ。
10月28日(月)

 僕の隣には、ゴドーさんが立っている。
 1人では不安になるけど、もう誰かに助けてもらわなきゃいけない僕でもない。
 そんな僕に、ありがたい存在。
 黙ってコーヒーを飲んでいてくれるだけで、僕はふてぶてしく笑うことができた。

「異議あり!」
 確信を持って叫ぶ。

 ピンチで思わず笑いが出てくるなんて、初めての経験だった。
10月27日(日)

 いつも、武器が足りないと思う。でも、その手持ちの武器だけでどうにか戦い、依頼人の無実を証明してきた。
 つまり、僕の手の中にはちゃんと武器がそろってるってことだ。

 こんなときいつも、御剣のことを、狩魔親子のことを思う。
 完璧な準備、ってどんなときに確信できるモンなんだろう。

 僕みたいな奴には一生、理解できないことかもしれないな。良い意味でも、悪い意味でも。
10月26日(土)

 秋の雨は妙に冷たいけど、でも動き回っていればそんなに気にならない。
 薄手のコートにかかる雨の雫を振り払いながら、あっちこっちと歩き回って、時間が足りない。

『ただいま』
『おかえり。お疲れさん、だぜ』
 事務所に帰ればあったかいコーヒーが待ってる。それだけで、もう一歩前へ足が出せた。
10月25日(金)

 審理初日は、どうにか持ちこたえた。
 明日、明後日をフルに調査に使えるのが助かる。

 まだ、決定的な証拠が足りない……!
10月24日(木)

「アンタ、もっとオレに頼っていいんだぜ?」
 不安そうな顔をしているからだろうか。ゴドーさんがそんなことを言ってきた。

「ええ、でも……今まで1人でやってきたんだし、ゴドーさんに頼りっきりってワケにもいかないでしょう?」
「頼るんじゃねえだろう? これは所員との『相談』だぜ」
「でも、どこまでが相談の範疇で、どこからが甘えなのか、自分でも良く分からなくて……」

 僕が歯切れの悪いことを言っていると、ゴドーさんはクッと笑ってあごをしゃくった。
「アンタはその新人気分から卒業しなきゃならねえなぁ。弁護士としてのウデより何より、そういう態度が客を不安にさせるんだぜ?」

 うっ…………。
 ゴドーさんの言葉は重いなぁ。本当に、そうだ。
10月23日(水)

 ゴドーさんにいろいろ手を借り知恵を借りしながらやってる。

 僕は主に足を使って、捜査。
 ゴドーさんは事務所で、資料検索。
 まるで二人三脚みたいな仕事が嬉しい。

 ゴドーさんに頼り過ぎないように気をつけているつもりだけど、やっぱりつい「どうなんでしょう?」のひと言が出ちゃうんだよなぁ。今までだって1人でやってこれたんだから、ゴドーさんに頼らなくてもどうにかなるんだろうけど……。
 そういう頼りがいのある相談役にそばにいてもらうってことは、悪いことじゃないよね。多分。
10月22日(火)

 仕事だ!

 前に弁護した依頼人が、知人の揉め事をナントカして欲しい、と相談してくれた。
 自分のやった仕事がちゃんと評価されてる、ってことを実感するなぁ。すごく、嬉しい。
10月21日(月)

 みんなの都合がついたので、夜、ゴドーさんの退院祝いをした。
 僕、真宵ちゃん、御剣、矢張、マコちゃん、イトノコさん、それに春美ちゃんまでわざわざ来てくれた。

「真宵さまからお電話をいただいて、飛んでまいりました! 神乃木さん、お元気になられたのですね。わたくし、お見舞いにも参りませんで……」
「クッ、オレのために遠いところをわざわざようこそ、お嬢ちゃん。コーヒーの価値の半分は味、そしてもう半分はその奥深いアロマ……だぜ」
「はぁ……ええと、どういうことでしょうか?」
「アンタの気持ちが嬉しい、ってことさ」
「そうなのですか!」
 ぴょんぴょん飛び跳ねる春美ちゃんを見て、ゴドーさんは本当に嬉しそうだった。

 退院祝いというかなんというか、結局ただ飲んだり食べたりしてただけだけど、誰かのために集まるってことが大切なんだなぁ、と思う。
10月20日(日)

「うわぁ……すごい雨……」
 さすがに食べるものがなくなってきたんで、買い物に出なきゃならなくなった。でも今まさに台風直撃、ってとこで、帰る頃には確実にぬれねずみになってるだろう。

 台風の中、1人で、壊れそうな傘を守るみたいに歩いていく。
 ゴドーさんは留守番。こんな日に外へ行くことないから、って僕が置いてきた。

「おいおい、いいじゃねえか雨の中の買い物くらい」
「ダメですよ。退院したばっかりなんですから。僕が何か買ってきますよ」
 過保護なのかな、と思う。ゴドーさんは見た目には体も大きくて元気そうだし、年上だし、僕が甘やかすのも何だか変な気がする。でもやっぱり無理してほしくない思いが強い。

 買い物帰り、1人でそんなことを考えていた。

 ちなみに、夕飯は鍋でした。
10月19日(土)

 大きな台風が近づいてるらしくて、かなりの雨だった。ほとんど外にも出ないで、ゴドーさんの部屋でごろごろしている。
 今は歴史小説を読んでいる。……音読もだいぶなれたけど、始めてみるとなかなか難しいもんだなぁ。目で読んでいるときは自分のテンポで想像しながら読めるけど、声に出すと、テンポを作りながら読まなきゃいけないから難しい。

 そんな僕の密かなこだわりなんて、気づいてないんだろうなぁ。ゴドーさんは。何を読んでもじっと聞いていてくれるけど。
10月18日(金)

 知り合いにちょっとした仕事を頼まれて、書類の作成。どうにか一日で片付けた。明日から休みだし、ゴドーさんとゆっくり過ごしたい。
 ゴドーさんが帰ってきてすぐに週末なんて、何だか得した気分だ。

「終わりましたよ。ふぅ……大丈夫かな、これで?」
「見せてみな………………………………うーん」
「だ、だめですか?」
「…………クッ、アンタ、見かけ以上にちゃんと勉強してるじゃねえか」
「ま、みっちり仕込まれましたからね」

 つい口に出して、はっとした。
 ゴドーさんの様子を窺ったけど、特に気にした様子はない。

 ……いまだに話していいかどうか、迷う。
 千尋さんのことは。
10月17日(木)

 ゴドーさんといっしょに夕飯を食べて、お風呂に入って、いっしょのベッドで寝て……。そろそろ寒いから、誰かといっしょのベッドは気持ちよく眠れる。

 それで朝は僕が先に目覚めて、コーヒーを淹れてあげる。起こすとお決まりみたいに、
「王子様のキスで起こしてくれないのかい?」
「お姫様気取りですか? ヒゲ生えてますよゴドーさん」
 なんてバカみたいなことを言い合いながら、でもちゃんとおはようのキスをして。

 一緒に、事務所へ行く。
 誰も来ないけど、2人きりでコーヒーを飲んで、お昼を食べて、夕方になったらいっしょに帰って。

 当たり前に生活する。ゴドーさんといっしょの生活。
10月16日(水)

 今日は真宵ちゃんが手伝いに来てくれた。
 …………掃除の。

「なるほどくんってさー、清潔にするのは得意だけど、整頓が苦手なんだよねぇ」
「うう……おっしゃるとおりです、マヨイ様」
 ちょっとゴドーさんや真宵ちゃんがいなくなった間に、ずいぶん事務所が散らかってしまった。トイレ掃除とか、皿洗いとかはまめにするんだけど、書類をまとめておくとか、読んだ本を元に戻すとか、そういうのが苦手なんだよな……。

 午後には真宵ちゃんに留守番をしてもらって、ゴドーさんを迎えに行く。
「ご苦労さんだな、所長自らお出迎えかい?」
「ええ、所員を大切にしないとやってけないですから」
「クッ、違いねえ……」

 そのまま家に帰るかと思ったのに、ゴドーさんは事務所に行きたいって言う。
「無理しなくていいんですよ?」
「オレのいない間に、オレの大切な事務所が荒れてないかどうか、見ねえとな」
 うっ、危なかった。やっぱり片付けておいて正解だったな。

「神乃木さーん! 退院おめでとうございますっ!」
「クッ、お嬢ちゃんの熱い歓迎、ありがたいぜ」

 ゴドーさんと真宵ちゃんが笑う。ゴドーさんの愛用のマグカップはココにあって、いつものコーヒーの匂いが漂い始める。僕は所長のデスク、ゴドーさんは接客ソファの長いほう、真宵ちゃんはソファの短いほうがいつもの定位置。
 ゴドーさんの居場所は、ちゃんとここにある。
 きっとゴドーさんは、それを確認したくてここへ来たんだろう。

 大丈夫、あなたの居場所はちゃんとここにありますから。
10月15日(火)

 突然、御剣から誘われて飲みに行くことになった。最近よく会う。会いたくないわけじゃないけど……今はやっぱり、会いたくない。でも、断る理由もなかったし、それに本当はやっぱり、会いたかった。顔が見たかった。
 自分を殺してもいいかな、とちょっぴり思った。本気で。

御剣と飲みに行く→→→→→
10月14日(月)

 頭の中に取りとめもなく回る、声。

「成歩堂」と、御剣が。
「まるほどう」と、ゴドーさんが。

 別々の僕になればいいのに。
 僕1人じゃ、この気持ちをどうすることもできそうにない。

 ゴドーさんの退院は、あさってに決まった。最初は「1週間くらい」なんて言ってたのに、結局3週間もかかってる。……今年は急に寒くなったから、ゴドーの調子も良くなかったみたいだし、しょうがないんだけど。
 僕は、ゴドーさんから離れたくない。早く帰ってきて下さい、ゴドーさん……。
10月12日(土)

 朝から、ゴドーさんのお見舞い。
「来週には退院できそうだぜ」
「ほんとですか!?」

 すごく、嬉しかった。そして、自分でもおかしいくらい安心していた。
 早く、早くゴドーさんに帰ってきて欲しい。ゴドーさんとの生活をまた続けたい。
 そうしたらきっともう大丈夫なんだって思う。それでひどく安心する。

 今なら、ちゃんと言えるかもしれない。……誰にも言わないけど、自分自身から逃げないで、ちゃんと認められるかもしれない。

 ゴドーさんのいない間、御剣のことを見るのが、声を聞くのが、つらかったってことを。

 やけにゴドーさんのことを気遣う御剣に、嫉妬して。
 ゴドーさんを取られる気がして。
 そして、僕以上にゴドーさんのことばかり見ている御剣が悔しくて。

「僕を無視するな」って。…………捕まえて、睨みつけて、ねじふせて。
 キスのひとつもしてやろうかなんて。
 暗い妄想に取り付かれていたりした。
10月11日(金)

 顔色がクリムゾンレーキで、しかもものすごく酒臭かったけど、ほとんど這うみたいにして事務所を開けた。こんな状態のときにお客さんが来たら、まぁ間違いなく回れ右をして帰っていくだろう。
 ……でも僕は、休みと決めた日以外は絶対に、なるべく、できれば休みたくない。千尋さんが残してくれたこの法律事務所を、きちんと守っていきたい。

 どうやら、マコちゃんが浮気している、らしい。しかも相手はイトノコさんだそうだ。
『アイツ、刑事のくせにオレのオンナを奪ったんだ!』とか何とか、すごい剣幕だったな。矢張の奴。
 ……でも、真宵ちゃんの話を聞くと、どうも根本的に違っているらしく。

『あのね、マコちゃんは最初から、ヤッパリ君とは付合ってなかったつもりだったみたいなの。それで、最近イトノコさんと普通に仲良くしてることに、ヤッパリ君が文句言うのがどうしてか分からないみたいで……。あ、でも、イトノコさんとのことも別に恋人じゃないみたいで、何て言うのかなぁ…………。男ばっかり勝手に騒いでる、って感じ?』

 要するに、相変わらず、予想通り、ヤッパリ矢張の思い込みだったわけだ。というか、最初からそうだと思ってたけど。
10月10日(木)

 昨日の夜、飲みすぎで体調がおかしかったから早く帰ろうと思ってたとき、ケータイが鳴った。
『ナルホドー! 聞いてくれヨ! マコちゃんがサ!!』
「………………矢張、切ってもいい?」
『ダメに決まってんだろ!? いいから聞けよ! マコちゃんがさ』

 …………。
 …………………………。

 何だかんだで引っ張り出され、矢張の話に付き合いながらまた飲まされてしまった。
 もう、最初の3杯しか記憶ないよ……。矢張の話も何だったのかさっぱり覚えてない。

 で、酔いつぶれて気付いたら夕方になってて。
 せっかくの休日だからゴドーさんのお見舞いにゆっくり行けるなって思ってたのに……!
 と、半ば呆然としていたら、またケータイ。

『成歩堂、私なのだが』
「ああ、御剣。どうしたの……」
『ナルホドー! オマエも早く来い! マコちゃんが……マコちゃんがぁぁぁぁ!』
『…………というわけなのだが』
「僕、夕べから付き合わされててぐたぐたなんだけど……」
『いいから付き合いたまえ。私と真宵君ではどうにもならない』
「真宵ちゃんもいるのか」
 そういえば真宵ちゃんはもう、お酒が飲める年なんだ。

 で、僕はこれからまた矢張につき合わされに行くところです。助けて……。
10月9日(水)

 頭がガンガンする。飲みすぎた……。
 御剣は今日休みだって言ってたから、今頃家で寝てるんだろうか。いいなぁ。僕は……まぁ、いつもながらお客さんの来ない事務所でぼんやりしてるだけだから、別にいいんだけど。

 夕べは遅くまで、御剣と飲んでいた。めちゃくちゃペースが速くて、完全に酒に飲まれてた。
 ……わざと、そうしていた気もする。
 いろいろ、吹っ切っちゃいたかったんだ。

 なんかいろいろよく覚えてないんだけど。
「君はそんなに、神乃木さんのことが好きなのか」
 御剣にそう言われたことだけ、やけにはっきりと覚えている。

 あのとき、御剣はどんな顔してたっけ。
 僕は、なんて返事したんだっけ。
10月7日(月)

 ケータイに短い着信音が鳴る。メールだ。

『神乃木さんはまだ、退院しないのだろうか? 退院が決まったら、知らせてくれ』
 御剣からだった。短いけど、心のこもったメール。……そんな風に思うのは、ひねくれた僕だけかもしれない。

 ねぇ御剣。どうしてそんなに、ゴドーさんのことを気にするのかな?


 ゴドーさん、まだ退院はできないって言われた。
 早く帰ってきてください。


 でないと、僕はどうにかなりそうです。僕からゴドーさんを奪っていくものは、他ならない僕であるという気がします。
10月6日(日)

 ゴドーさんのそばにいるとちゃんと分かるのになぁ。

「ダイスキですよ」
「クッ……照れちゃうぜ」

 左手を左手に重ねて、シルバーリングが重なる音を聞く。どうして僕の心はちゃんとしてないんだろう。

 ねえゴドーさん、どうやったら僕はここにいられますか?
10月5日(土)

「どうした、アンタ」
「どうもしないですけど」
「そうかい」

 分かってる。ゴドーさんのお見舞いに行っても、どっか上の空だ。

 せっかくゴドーさんと一緒にいるのに。僕の心はまるでここにいないみたいだ。
10月4日(金)

 一人は、良くない。

 いろいろなことを考えてしまうから。
10月3日(木)

 御剣から、電話。
『昨日は、その…………ありがとう、成歩堂』
「ううん、こっちこそ。わざわざありがとう」

 ゴドーさんのこととなると、妙に連絡が頻繁になるのは、絶対に気のせいじゃないと思う。今まではメールだって滅多によこさなかったのに。
 ……まぁ、入院してる人がいれば、連絡するのは当たり前のことなんだろうけど。

 僕はいったい、何に対して嫉妬しているのか。
10月2日(水)

 僕ももう27なんだから、子供みたいな感情は抑えなきゃいけないのに。

「今日は2人そろってお出ましかい。オレみたいなポンコツ、わざわざ見に来たって何も出ねぇぜ?」
「何かを見に来たわけではないが、あなたが元気そうならそれでいい」
「クッ……」
 照れているゴドーさんと、穏やかな顔をしている御剣を見ながら、僕はまるで子供みたいだった。

 僕のゴドーさんなのに。
 僕のゴドーさんに、そんな優しそうな顔するなよ。
 ゴドーさんもそんなに嬉しそうな顔、しないでよ。
10月1日(火)

 明日はゴドーさんのお見舞い。御剣と一緒に。

 もちろん、いつもみたいにくっついたり、蕩けたような笑顔になったりしちゃいけない。ゴドーさん、って呼ぶ声のひとつひとつも、気をつけないと甘くなっちゃうかもしれない。
 ……病院にいるゴドーさんはゴーグルがないせいか、なんとなくいつもよりカワイイ感じがするんだよね。

 そんな心配をしながら、僕は、もっともっと余計な心配のことを考えないようにしている。