10月のちひの日記

10月31日(日)

 昨日はデゼニーランドにつれてってもらったのです! なんだかたくさん人がいて、たくさんならぶところです。でも、のりものとかたくさんあって、たくさんたのしいのです!
 センパイのポケットに入ればのりものにものれます。ジェットコースターでは、センパイがぎゅってしててくれるからだいじょうぶ、安心です。はやくないのりものは、ゆっくり見れます。ちひーーーーー! だいこうふん!!

「あんまり大声出すとばれちゃうぜ。おとなしくできるな?」
「がんばります!」
 センパイにめいわくをかけないように、ちひはいっしょうけんめい、こえを出さないようにしてました。でも、こわいときや楽しいときはやっぱり「ちひ〜〜〜〜!」ってさけんじゃいました。でも、みんなもだいこうふんだったから、だれもちひには気づかなかったみたい。

 おみやげやさんがすごくこんでたんだけど、ちひはどうしてもキャンディーがほしかったので、買ってもらいました。
「ちひ〜……神乃木センパイすみません」
「ここまできたら、トコトン楽しむ。そいつがおれのルールだぜ」
「か…………」

 神乃木センパイ、かっこいい〜〜〜vv
10月29日(金)

 ねるとき、神乃木センパイはいいにおいがします。
 たぶん、シャンプーのにおい。コーヒーじゃないにおいもいいにおいです。

 どきどき。
10月28日(木)

 生倉センパイとトノサマンの話でもりあがりました。
 神乃木センパイはトノサマンがあんまりよくわかんないので、コーヒーばっかりのんでました。

 ううん、ちひはどうしちゃったんでしょう?
10月27日(水)

『見つめあうとすなおにおしゃべりできない』って、だれかが歌ってました。

 神乃木センパイをじっと見てて、ふっとこっちを見て、
「どうした?」
 ……って。

 ちひ〜。
10月26日(火)

 おしごとをする神乃木センパイはかっこいいです。
 ドキドキ。

 生倉センパイとはふつうにおしゃべりできるのになぁ〜。
10月25日(月)

「生倉せんぱ〜い、きのうの『トノサマン一丁!』ビデオにとってないですか〜?」
「ちゃんととってあるよ」
「やた〜vv そ、それでおカヨちゃんとぎりの母のカクシツはどうなりました?」
「ふふふ、それがだね、ますますいんさんなヨメシュウトメのたたかいが……」
「ちひゃ〜! それいじょう言っちゃダメなのです! おたのしみなのです!」

 たのしみ! 早くおうちにかえって見よう!
10月24日(日)

 ちひゃ!!
 ねぼうしたら、「トノサマン一丁!」見れなかった〜……。
10月23日(土)

 たくさんたくさん、おかいもの!
 それから、おいしいごはん!

 お休みの日ってたのしい〜vv ちひ〜vv
10月22日(金)

「ちひ〜…………」
 明日からしゅうまつです。しゅうまつは、パソコンはお休みです。
 こうかん日記を見たけど、やっぱりゴドーさんのおへんじはありませんでした……。

 さいごにゴドーさんから日記をかいてもらったのが、せんしゅうの月ようびでした。あれから2しゅうかんになります。
 ゴドーさん、大切なものとりかえしにいってるのかなぁ……。
 大切なもの、取り返せたかなぁ……。
 まさか、けがとかびょうきとか、してないよね? ねぇ?

 とってもしんぱいです……。ちひはねこさんとくまさんをぎゅってして、ゴドーさんがんばれってずっとおいのりしてました。
10月21日(木) 記録者:神乃木荘龍

 生倉から、やたらと重いメールが来た。
『コーヒー、時計、撲殺、被害者は女性。……そんなキーワードで検索した事件の資料を送る。私が検証した結果では何も出なかったが、一応見ておくといい』
 添付された資料にざっと目を通してみるが、関係のありそうな事件はない。

 ちひはねことくまの小さなぬいぐるみを抱いて、缶の中でおとなしく眠っている。最近は怖い夢を見ることもないらしい。

『もう、いいんじゃねえかな。……ちひのことをあれこれ詮索するのは、止めようぜ』
 そう書きかけたメールを、オレはじっと眺めている。
 余計な詮索はしたくない。しないほうがいいような気がしている。

 けれど、それは本当に最善なのか?
 いつまた、ちひが怖い夢にうなされないとも限らない。
 そのとき、オレは後悔しないのか?

 やるべきことはやったほうがいいのかも知れない。
 ちひのことを知る上で、何か手がかりはないか。
10月20日(水)

 おしごと中に本を読むのはどうなんでしょう? センパイも本を読んでるけど、ちひのとはちがうむずかしい本です。ちひもポケット六法をもってるけど、まだむずかしくて……ちひ〜。

「星影センセイ、あの、おしごと中にこれを読むのはダメですか?」
 センセイに聞いたらいいと思って、ちひは「きつねのまど」を見せました。
「うむ。いいんぢゃないかね。どくしょもべんきょうのうちぢゃからな」

 わーいわーい。ちひはおべんきょうするのです。今日は「きつねのまど」を読みました。
10月19日(火)

 だいぶかん字が書けるようになりました。読むのもできるようになりました。

 神乃木センパイにあたらしい本を買ってもらいました。「きつねのまど」という本です。読むのたのしみv
10月18日(月)

「ちひ君、さいきん雨がおおいねえ」
「そうですねぇ」
「つかうことはないだろうが、こんなものをほしくはないかな?」
「ちひっっ!!??」

 生倉センパイがさしだしたのは、ちひサイズの小さな赤いかさ!

「うわあ! かわいいですかわいいですっ!! ちひのかさ!」
「うん、きのうたまたま手に入れてね。雨の中ひとりで歩くこともないだろうとはおもったんだが」
「でも、かさはいいです! かわいいです! ちひゃ〜vv 生倉センパイありがとうございますっっ!!」

 かわいいかさ! ちひはかさをくるくるしてみたかったので、うれしいですvv
10月17日(日)

 この間がんかけでたべるのをがまんしたドーナツ、まだお店にあるかチェック。……よかった〜、まだうってました。いつまでうってるかな? ゴドーさんがたいせつなものをとりもどすまで、ちゃんとうってるかなぁ?

「ちひ〜…………」
「おい、よだれたれてるぜ」
「ちひゃっ! い、いいのです。がんかけなのです」
「そうか。がんばれよ。……おうえんしてるぜ」

 神乃木センパイ、おうえんしてくれた……! ちひはそのひと言だけで何だかとっても嬉しくなれたのです。
 がんかけって、きっとこういうふうにだれかのことをおうえんすること。
 だれかに「おうえんしてるよ」って言われたら、それだけでげんきになれること!
10月16日(土)

 しょーろんぽーがおいしかった、と言ったら、神乃木センパイがちゅーかがいにつれてってくれました。ちゅーかがい、は知らない国みたいなへんなとこでした。ええと、中国? みたいなの?

「中国はべんごしにかんけいありますか?」
「さあ……ねぇんじゃねえか?」
「ちひ〜。それじゃこまります〜」
「こまることねえさ。いろんなものを見ておくのも、べんごしにはひつようなことだ」

 ちひっ! そうです! いろんなものをたくさん見たら、べんごしへ近づけるのです!

 だからちひは、ほんばのしょーろんぽーとか、おっきなにくまんとか、あんにんどーふとか、たぴおかとか、ふかひれとか、食べました。べんごしに近づいた!

 おみやげに、しょーろんぽーのこおったのを買ってもらいました。あと、まるいぼうしをかぶったくまさんも買ってもらいました。今日から、ねこさんとくまさんといっしょにねます。ねこさんは、ゴドーさん。くまさんは、神乃木センパイ。夜もいっしょにぎゅってしてればあんしんです。
10月15日(金)

 おどろき! ちひサイズのにくまん見つけた! 小さいにくまん!

「……しょーろんぽー、食べたいのか?」
「しょーろんぽー、っていうんですか? た、食べたい……」

 神乃木センパイに買ってもらいました。おゆうはんはしょーろんぽーでした。

 しょーろんぽーは、小さいけどあつい! でもおいしい! ちひはにくまんよりしょーろんぽーのほうがすきかもー。ちひっ。
10月14日(木) 記録者:生倉雪夫

 神乃木からメールが来た。
『時計じゃなく、コーヒーの方をキーワードにしたらどうか』ということだ。……そんなことは今、すでに始めていたところだ。

 しかしコーヒーがキーワードとなると、たいていは毒殺だ。女性の名前もちらほら出てくるが、どうにも無関係としか思えない。神乃木も独自に調査を進めているようだが、同じようなことをぼやいていた。

『時計も、コーヒーも、ちひに関係のある事件はなさそうだ。
やっぱりタダの夢なんじゃねえか、とオレは思い始めてる』

 最近のちひ君はすっかり元気を取り戻している。ネット友達のために願掛けをするなど、前向きな行動が元気の素になっているのだろう。そんなちひ君を見ていると、確かにこんな調査はどうでもいいような気がしてくる。

 ……いや、本当は逃げようとしているのだ。逃げたいのだ。
 ちひ君の真実から。
 何か、知ってはいけないことを知ろうとしているときのような、根拠のない罪悪感をいつも感じている。
10月12日(火)

 ちひ〜。ちひは何年生きてるのかなぁ。
 思い出せるのは、クッキーのまるいかんの中でぼんやりしてたところから。
 それより前のことは、思い出せない。

 とにかく、べんごしにならなきゃって思ってたことだけは、たしか。
10月11日(月)

 うう、ちょっと気持ち悪いですー……。おさけのみすぎたみたい。
「アンタ、ちっこいんだからさけなんかのんじゃ、ダメだぜ?」
 かくれてこっそりのんだのに、やっぱりばれてしまいました。なんで?

 おさけははたちになってから!

 ちひは、いくつ? あれれ? はたちこえてない?
10月10日(日)

 おでん! おでんはいいと思います!
 ちひは、はんぺんがすき。白くて、ふわふわ。あと、だいこん!

 ちひと、神乃木センパイと、生倉センパイと、星影センセイと、みんなで赤いおでんやさんに行きました。赤いちょうちんがあって、「なわのれん」なのです。かっこいい!

 生倉センパイと「たたかうおてつだいさんロボット」についてあつくかたりあいました。生倉センパイはおさけをのみながら、だいこうふんでかたってくれました。ちひも、こっそり、ちょっぴり、おさけをのんだのでだいこうふんでした。
「ぱよぱよなどにこだわるひつようなどまったくないのだ! むしろなくてもよし!」
「ちひー! そうですか! やっぱりえっちなのはいけないと思いますのだ! 神乃木センパイはどう思いますか!?」
「………………いいんじゃねえかな……」

 神乃木センパイは赤いくせにあつくなーい! もっと赤くないと!
10月9日(土)

 お外はすごい雨なので、おうちでセンパイとアニメを見てます。たたかうおてつだいさんロボットは、女の人で、でも人間じゃなくて、でもまるっきり人間みたいです。

「ちひ、おもしろいか?」
「おもしろいです。やっぱりおっぱいは大きいほうがいいですか?」
「………………えーと、『エッチなのはいけないと思う』、だぜ」

 センパイはアニメのせりふをまねしました。

 エッチなのはいけないと思います! ちひっ!
10月7日(木)

 生倉センパイから、アニメをかりました。こんどは、たたかうおてつだいさんロボットのアニメです。

 ……やっぱり、おっぱいは大きいほうがいい? ぱよぱよ。
10月6日(水) 記録者:神乃木荘龍

 生倉からメールが来た。

『いろいろと調べてみたのだが、やはりあのメモの条件に合致するような事件は、実際には起こっていないようだ。少なくともデータベース化された範囲内では、そのような事件は見つからなかった。
時計が凶器、というのは、何かのたとえなのだろうか? 検索キーが間違っているのだろうか?
君の意見を聞かせて欲しい。   生倉』

 時計に殺される、ってのは確かに滅多にない話だ。それにコーヒーの闇ってのは……何の話だ?

 良く知っているような、まったく知らないような。……ちひの心の闇に埋もれているその光景は、いったい何なんだ?
 オレはコーヒーを飲みながら、平和そうな顔で寝ているクッキー缶の中のちひを眺めていた。
10月5日(火)

「ずいぶんがんばるじゃねえか、ちひ」
「ちひーっ! がんばるのです。ご…………」
「ご?」
「…………ごはんはまだですか」
「クッ、さっき食べたぜ、はらへりコネコちゃん」

 あぶないあぶないです。ゴドーさんのことはヒミツなのです。……なんとなく。
 あんまりしゃべったら、神乃木センパイは楽しくない気がするのです。

 それに、ヒミツってちょっと楽しい。ちひが楽しくて、センパイが楽しくなくならないから、ヒミツでいいと思う〜。ちひ〜。
10月4日(月)

 ミスドであたらしいドーナツが出てました。はちみつのしみてる、あまくておいしそうな、ドーナツ。

「………………ちひ〜……」
「………………ほしいのか、ちひ?」
「ほ、ほし…………いらないです……」

 今日もひとつ、がまんした! 「がんかけ」がんばる!!
10月3日(日)

 神乃木センパイがお仕事いそがしくなってきました。ちひはじゃましちゃいけないので、センパイのゆびわをぎゅっとしてました。
 うーん、あんまりあったかくないけど…………センパイとぎゅっとしてるかんじにはにてるから、きっといいことです。こうしていれば、ちひはちひがどこにいるか、ちゃんとわかりそうです。

 ゴドーさんは、大切なものをとりかえせたかなぁ……。今日はカフェオレにおさとう入れないで「がんかけ」しました。がんばれゴドーさんっ! ちひっ!

「さとう、いらねえのかい?」
「今日だけ、いりません。がんかけなのです」
 ……でもおさとうなくても、カフェオレけっこうおいしかったー。がんかけだめかもー! ちひ〜。
10月2日(土) 記録者:生倉雪夫

 神乃木から来たメールを、何度も読み返している。
『笑顔で目の前に迫る闇への入り口に、私は抗うことができずに。
時計が、迫ってくる。』

 どういうことなのだろうか。これはおそらく、ちひ君の本来の思考能力ではない。
 何かの記憶か、何か別の要因が、ちひ君にこれを書かせた。

 未来視か、過去の記憶か。
 私はオカルトと言うものは根本的には信じていないのだが、何らかの原因があればオカルティックな現象が起こることは認める。だから、今は分からない何らかの原因があって、ちひ君はあれを書いたのだろうということを前提にする。

 時計、が凶器の殺人事件。そういう記憶だろう。
 オンラインで検索を掛けてみるが、さすがに凶器が時計というのはほとんど無い。しかも被害者は9割方が男で、ちひ君とはどう考えても繋がらないのだ。

 もうしばらく、考えてみることにする。
10月1日(金)

 神乃木センパイのゆびわが左手になったので、生倉センパイも星影センセイもおどろいてました。
「ずっと右手だったからなぁ」
「ちひ? なんでですか?」
「別に……意味はねえさ」

 そう言った神乃木センパイのかおは、なんだかちょっとさびしそうだった…………。ちひひ?