Oh Yeah








 熱い体のまま、濡れた体のままで。
 2人はベッドにもつれ込む。

「ゴドーさんすごい……熱い……」
 まだ濡れている首筋に舌を這わせ、雫を舐め取る。白い髪からは雨粒のような水滴が次から次へと零れ落ち、ゴドーの首筋を流れていく。
 ミルクを飲むネコのようにそれを舐め取って、成歩堂はとろりと蕩けた視線でゴドーを見上げた。

 白い髪が水滴をまとって輝き、柔らかくほどけて流れている。
 見えない目で天井を眺め、成歩堂のしたいようにさせているゴドーの横顔が、安らかな表情でそこに在る。

 手で濡れた頬に触れると、微かに頭をもたげて微笑んだ。

(ゴドーさん……ここにいる……)

 それはまるで、朝露に濡れる野生のライオンのようだ。
 優しく、強く、そしてその気になれば獲物をひと口で噛み砕く。

(でも、僕はちっとも怖くないですよ……ほら)

 成歩堂は首を伸ばす。
 視界の暗いゴドーを驚かせないように、頬に1回触れて、それから唇に口付ける。
 柔らかな唇が触れ合うだけで、体の中に火が付きそうだ。

 無抵抗な唇を割って、深く唇を味わう。
 舌を伸ばせば、迎え入れて絡ませ合い、そしていつしか翻弄されている。

「おいしいのかい?」
「ゴドーさんの味がするんです」
「クッ……そいつはオトナの味だぜ」
「ただのコーヒー味ですよ」

 そいつがオトナの味なのさ、とゴドーは気障に笑った。

 そんな何気ない会話も、2人にとっては他ならない愛のささやき。




 そこにいることを伝えるために、手をつないだまま、指を絡ませたままで。
 呆れるほどにキスを繰り返して、何度も舌を絡めて。

「ん…………ふ……」

 薄い闇に包まれた部屋で、何もかも忘れて、切なさを埋めるように。
 また、唇を重ねて。




 ゴドーの左側が、愛しい恋人の居場所になっている。
 腕を伸ばして、しっかりと抱える。
 見えない目でも、恋人がそこにいることをはっきりと感じる。

「ご機嫌だな」
「そうですね」

 少し首を伸ばすだけで、ゴドーの頬に唇が触れる。
 成歩堂は声を上げて小さく笑い、いたずらのように何度もキスをする。

 ちゅっ、と音を立てて、唇が触れる。
 柔らかく濡れた唇が、頬に当たる。

 耳に聞かせて、皮膚に触って、舌を絡めて味わって。
 見えない視界しか持たないゴドーのための、それは精一杯の心づくし。

 そうと知っているからこそ、一生懸命触れてくる成歩堂が、いっそう、愛しい。

「イイ子だ…………」

 左腕で抱えた頭を撫でてやると、嬉しそうに体をよじらせる。
 「嬉しい」もちゃんと体で表現するから、見えなくても不自由は無かった。




 それでも、時々。


(アンタは泣いてることがある)

 怖い夢でも見るのか。
 怖い未来でも見るのか。
 何かに怯えているのか。

 成歩堂は泣いていることがある。

 そんな時、やっぱりゴドーの腕の中にいながら、成歩堂は後ろを向いている。
 いつも触れている成歩堂の右肩が、いつのまにか左肩に変わっているときがある。

 後ろを向いて、1人で泣いて。




 こんなに愛しくても、救えない闇がある。
 ゴドーはため息を吐いて。
 成歩堂をしっかりと腕に抱く。

「ゴドーさん……?」
「ちゃんとこっち、向いてるかい?」

 子供のように尋ねれば、返事の代わりにキスが来る。
 唇に、顎に、咽喉に、胸にキスの雨を降らせて。
 成歩堂は「アナタの方を、ちゃんと向いてますよ」と返事する。

 今日は右肩。
 くすくすと小さく笑う成歩堂は、機嫌がいい。

 今度は安堵のため息を吐いて。
 成歩堂をしっかりと腕に抱く。



「イイ子だ…………」

 誉めてやれば、嬉しそうに体をすり寄せて。
 また、柔らかいキスの感触。

 応えて唇を貪り、味わって、奪って、与えて。

 愛しい気持ちの在り処を恋人に刻む。




 水よりも、空気よりも。

「アンタのキスは、オレにとってなくちゃならねえモンなんだ」


「コーヒーよりも?」
「クッ……そいつはどうかな」
「ゴドーさんは水よりも空気よりも、きっとコーヒーが必要なんですね」

 呆れた声の成歩堂に、つい甘えてしまう。
 本当は照れくさくて言えないだけの、本音を。






 水よりも、空気よりも。

 アンタのキスがなきゃ、生きていけそうもないぜ。








<END>






Oh! Yeah! 作詞 小田和正


ほどけた髪が好き よこ顔はあどけなく
やわらかなくちびる ふさげば

ふざけてるふりして かすれた声 耳もと
ささやく愛はいつでも 言葉 こえて

去りゆく夏の うしろ姿が
恋する二人 切なくさせて
君が指を 絡ませる

嬉しい時は右 左の肩は涙
もたれる 君のぬくもり

信じられないくらい やさしいそのほほえみ
ちいさく揺れる胸に 時を忘れて

流れる星に 想いはひとつ
灼けた素肌が また触れ合って
いっそこのまま 夜明けまで
















ゴドナル!(挨拶) 最近私のゴドナルがだんだん分かってきました。やっぱり、奉仕なんですよ。ゴドーさんのためにいろいろ気を使ってあげるまるほどうがかわいいんですよ! 健気なんですよ! 強くて優しいんですよ! ゴドーさんなんてただ自分の居場所を見つけるためにまるほどうに甘えてりゃいいんですけど、まるほどうはゴドーさんが生きていくためにいろいろと頑張ってあげるんですよ。

裸眼では視力のないゴドーさんのために、肌で触れることを怠らないまるほどう。「顔もちゃんとアナタを向いてますよ」と言うために、キスを繰り返すまるほどう。喜びを顔の表情だけで作らずに、声や体でちゃんと表現するまるほどう。ああああかわいい! かっこいい! 強いまるほどうがいいですよね!

遅くなりましたが、当サイト40000HITのエセキリリクでHANAさんから頂戴した「甘甘、kissばっかしてるバカップル」のつもりです。ちょっとバカップルからほど遠くなっちゃいましたけど、キスばっかりはクリアしたので許してください(汗)。うちのまるほどうはシャイシャイボーイだからなかなか手放しでラブラブしてくれないみたいです……えへ。
 By明日狩り  2004/10/3