ことばにできない







何度も思い出す。
もう、体にしみこんで、オレそのものになっちまってる、アンタを。

あの頃は若くて、怖いものなど何もなかった。
いつか、助けてやる。
いつか、救ってやる。
いつか、愛していると言ってやる。

いつか、いつか、いつか……。

コネコちゃんをからかうのに忙しくて、何ひとつきちんとしちゃいなかった。
大切なことはいつかできると、未来に甘えていた。

「いつか」が来なくなることなんて、考えてもいなかった。



時間は永遠じゃなかった。
約束なんて、どこにもなかった。
アンタの笑顔が、拗ねた顔が、なくなるなんて思いもしなかった。





アンタの命と共に、すべて無くなっちまったと思った。










「ゴドーさん」と呼ぶ声が、オレを現実に引き戻す。
よく見えない視界の中で、オレのたったひとつの「現実」が笑う。
「また考え事、してるんですね」と、困ったように笑うお前は、
オレを裁かない。オレを責めない。

1人では生きられない。
のたうちまわって思い知らされて。
今、手に入れたオレの「現実」。


なぁ、アンタは許してくれるかい?





謝罪の言葉なんて、思い出せねぇ。
何を言っても、ただの後悔にしかならないのに。
オレに言える言葉なんて、何かあるんだろうか。





口にする言葉はどれもこれも不実で、吐き気がする。
それを不実と思ってるのは、オレだけかも知れねえが。
誰もオレを裁かない。

ただ、オレだけが、
オレの小ささを、弱さを許せないでいる。



自分を許すことさえできない弱い自分に、
やっぱり腹が立って、悔しくて。
何も言えなくなる。













自責と後悔と嫌悪と。
でも、たったひとつ忘れたくないものがある。
何もかもが嫌になっちまいそうなオレの人生の中に、

アンタがいたってことだけは。
一緒に歩いたことだけは。

アンタと会えたことだけは。


後悔しない。






アンタに会えて、良かった。






それだけは、誠実に言えそうな気がする。






「言葉にできない」 作詞 小田和正


終わるはずのない 愛が途絶えた
命尽きていくように
違う きっと違う…
心が叫んでる

一人では生きていけなくて
また 誰かを愛している

心 悲しくて
言葉にできない

切ない嘘をついては言い訳を飲み込んで
果たせぬ あの頃の夢はもう消えた

誰のせいでもない
自分が小さすぎるから

それが悔しくて
言葉にできない

あなたに逢えて 本当によかった
うれしくて うれしくて
言葉にできない






 By明日狩り  2004/9/25