「コレは?」
 おかしな形をしたガラス棒を、白衣の教師が突きつける。ぐりぐりと頬に押し付けられて、神乃木は顔をしかめた。

「イテェ」
「イテエ、ではないね。……これは流水ポンプ。では、コレは?」
 メモリの付いたスタンド型のガラス器具を顎の下に当てると、ケンカを売るようにぐっと持ち上げた。
 顎を上げられ、上から睨みつけるようにして、神乃木は口を開く。

「め、メモリガラス」
「適当なことを言うな。メスシリンダーも分からないのか。まったく」
 教師は大げさにため息を吐き、メガネの奥から神乃木を睨みつける。

「授業は出ない。勉強はしない。教師には逆らう。そんなことで進級するつもりか?」
「…………悪かったよ」
 神乃木にしては素直に、謝る。そんな自分を自分で誉めてやりたい、と神乃木は思った。

(ちゃんと進級するって、約束したんだ……センセイと)

 脳裏に浮かぶのは、優しい笑顔。
 メガネのセンセイ、といってもこんなくたびれた白衣のセンコーとは違う。神乃木がただ1人「先生」と認めた人。
 御剣弁護士のことだ。


 御剣弁護士に会って、神乃木の人生は変わった。必ず進級すると約束したのも、御剣信に対する敬意を精一杯表したかったからだった。

(オレはちゃんとできるって……センセイに見せてやりてぇんだ…………)


 素直に謝る神乃木に、教師はおや、という顔をする。
「悪いと思っているのか」
「ああ、だからカンベンしてくれよ」

 つい顔がニヤけてしまうのは、照れがあるからだった。教師に「悪かった」などと言ったのは今日が初めてで、どうしても照れが入る。
 それを、どうやら「バカにされている」と感じたらしい。白衣の教師は癇に障った、といった表情をあからさまにして、神乃木をにらみつける。

「そんなに進級したいのか」
「ああ」

 教師はニヤニヤと笑う神乃木をじろり、と一瞥し、そして唇の端をゆがめた。

「いいだろう。ならば、テストだ」
「テスト……って……」
 これっぽっちも勉強などしていない。今日から頑張るつもりの神乃木をテストしたところで、「やる気」以外のものなど出るはずもなかった。
(やる気なら、自信あるけどなぁ……)

「私が良いと言えば、進級させてやろう」

 教師は突然、神乃木の体を突き倒した。理科室の黒い実験台の上に、背中から倒れこむ。後頭部を強く打って、一瞬意識が真っ白になった。

「……ってェ……」
「テストだ、神乃木」

 頭を抱える神乃木のズボンに手を掛け、一気に引き下ろす。緩く腰ではいていたズボンは引っ張るだけで簡単に膝まで降りてしまった。
 素肌に空気が触れ、下着まで下ろされたことに気付く。

「なっ!!」
「ほら、これだ」

 足を広げられ、冷たいものが押し当てられた。

「ひっ」
「コレは何だ」
「やめ……止めろ……ッ」
「ヤメロ、ではない。ろうとだ。では次」

 ぴたりと何かが押し当てられ、体の中に少しずつ進入してくる。
 ぞっと背筋が凍った。

「な、入って…………や……」
 体内に侵食してくる硬質の物体に、神乃木は悲鳴を上げた。

「答えなさい」
「ひ、あ、あ……」
「答えるんだ。コレは、何だ?」
「い…………やだ…………あ……」

 奥まで挿入されたそれは硬く冷たく、圧迫感と嫌悪感で神乃木は眩暈がした。

「これは、何だ」
「や…………め……っ」
「分かるだろう、一番簡単な実験器具じゃないか」
「し…………しけんか…………」
 ぶるぶると震えながら、咽喉を絞って声を出す。

 教師は満足げに頷いた。
「分かっているじゃないか。ほら、試験管、だ」
 言いながら、神乃木の体に埋め込んだ試験管をずるずると引き抜き、再び奥までうがつ。

「ぐああっ…………き、気色わり…………」
「力を抜くんだ。そんなに力を入れたら…………ナカで割れても、知らないぞ」
「ひっ……」
 氷のような言葉に貫かれて、恐怖のために全身総毛だつ。


「試験管程度でまいっているようでは、困るな」
 教師は眼鏡を指で押し上げ、不吉な笑みを浮かべた。

「君が知らないことを、いろいろと教えてあげよう…………神乃木」


 自分が今までどんなに子供だったか。
 守られて生きてきたのか。

 神乃木荘龍は目に涙をにじませながら、痛いほど思い知らされていた。





<続かない>





めんどうだから、ゴミ。ぽーい。昨日のチャットで頂いたネタです。参加者の皆様、昨日はどうもありがとうございました! 昨日の中盤あたりで盛り上がった学ラン神乃木ネタで、「御剣信との約束を守るために、教師のセクハラを撥ね退けられない神乃木少年」、当然お相手は白衣で眼鏡の化学教師です! 萌え!(私が)
この後変態教師にいろいろされた挙句、試験管に精液を採取されるとかいうネタまであったのですが、その辺は早漏の神が爆弾投下していかれたので私はもう満足しちゃいました(うわぁ……全然意味わかんない日本語。わかる人だけわかれ)
by明日狩り 2004/9/23


……とかゆってたら、忍城さんから絵もらった! むしろ「神乃木がね、学ランでね、こうメスシリンダーをね……」と丁寧に説明した挙句、描かせましたv いえーい神乃木ー!