電話/PR

















 腹減った。
 そう思った時には、スデに電話を掛けていた。

 アンタはいつも5コール以内で電話に出る。本当に生真面目な男だ。

『どうした』

 そら、おいでなすった。仕事モードの声。

「飯食い行こうぜ」

 しばし沈黙。やがて返答。

『時間があまりない』

 今度は、プライベートモードの声。

「どうせアジトの事務室にいるんだろ? 時間がないのはいつものことだ」

 しばし沈黙。どうせ図星だ。オメーの考えてることなんて電話のこっちからだって丸見えだ。

『だが、報告』
「今から車で迎えに行く。15分だ。それまでにそのパジャマは着替えておけよ。じゃあな」
『パジャマなん』

 皆まで聞かずにシャットダウン。強制終了。
 どうせアジトでいつものように報告書を書いてるだけだ。そんなのはいいからオレの飯に付き合えばいい。
 パジャマは冗談だけどな。

 リゾットの様子が目に浮かぶ。

 一方的に切られた電話を持って、ため息を吐く。時計を見る。はたしてその報告書を仕上げるのにあとどれくらいかかるのか、プロシュートと飯を食う暇があるのかどうか、しばし考える。「まったくあいつは、人の都合も考えないで」と独り言を言う。それから最後に、ちょっとだけ笑うだろう。

 不自由で不器用なリゾット。
 やりたいこともできず、やりたくないことばかりやらされて、やり過ごすこともできない。

 そんなかわいそうなアンタの代わりに、オレが自由に生きてやろうじゃないか。
 ワガママに、自由に、素直に。
 そうしてありのままに生きるオレに振り回されて、アンタも少しは自由の片鱗を味わうといいさ。

「クックックッ……」

 アンタを振り回すのが、オレの喜び。オレの役目。

 さ、リゾット。仕事なんて放り出して、飯を食いに行くぜ。



【END】







オレオレな兄貴。リゾットはプロシュートもそうだけど、自由に個性的に生きてる暗チのことが全員大好き。だから暗チは個性が野放し。
 By明日狩り  2011/08/09