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「ん……はぁ……」
「ギアッチョ、スゴクいい……」
「あ……ァ…………」
シーツを掴んだ両手が、少年ぽくてかわいいな、とメローネは思う。
(ギアッチョの、少年ぽいとこ、好きだ)
足も、手も、すごく少年ぽい。
しなやかで、健康で、驚くほど伸びたり縮んだりする、魅力的な存在だ。
力を秘めて、若々しくて。
伸び盛りの夏草のような、ギアッチョの手足はとっても素敵だ。
「ギアッチョ……」
「……んン……」
咽喉を押しつぶしたようなうめき声をもらして、ギアッチョは身体をしならせる。
今日のギアッチョはとてもおとなしい、とメローネは、思った。
いつもならもっと、身も世もなく盛大に喘ぎまくってくれるのに。
(生まれたての赤ちゃんみたいに、何にも知らないみたいに、いっぱい声を出すとこがイイのに)
いつものギアッチョなら、そうしてくれる。
アジトの壁を隔てて誰かに聞こえる、なんてこともお構いなしに。
それを後で誰かにからかわれたらモノスゴク怒るくせに。
それでもギアッチョはいつも、声を殺すことをしない。
だから、男同士ではどうやったって非生産的な行為にしかならないと分かっていても、
ギアッチョとのセックスはとても生産的な行為のように思える。
だから、メローネは、ギアッチョとするのが好きなのだ。
「んぅ…………ぁ……」
けれど今日のギアッチョは、とても静かに、熱を秘めている。
ときおりその口からもれる声も、息も、熱も、密やかで慎ましやかで、
それはそれでとても素敵なのだけれど。
(もっと声を聞きたいな)
メローネはわざと口元にいやらしい笑みを浮かべた。
「ギアッチョ、オレ……もうイきそう」
「あ……イケよ…………オレもイク…………ぁっ……」
「ね、ナカに出してあげるね」
「あァ? フザケん……なょ…………」
ナカに出したらいろいろと後が大変なのは、女の子も、少年も、同じだ。
でもメローネは唇に貼り付けた微笑を崩さない。
「子作りしようよ」
「あァ? …………っっん」
「ギアッチョに種付けしてあげる。それでオレの赤ちゃん、生んでくれないか?」
ギアッチョがうっすらと目を開けた。
メローネの作り物のような笑顔が、目に映る。
「へぇ」
唇の端を釣り上げて、ギアッチョが挑戦的な笑みを作った。
「どーせ、できねーぜ」
メガネを外したギアッチョの目玉が、何物にも遮られることなく、メローネを捉える。
心の中をかき混ぜるようなその刺激的な視線に、メローネはゾクゾクと魂が震えるのを感じた。
「やってみなけりゃ分からないだろ?」
「分かってるくせによ」
「でも、やってみたいんだ」
ギアッチョは、「ハ」と細く息を吐いた。
メローネは、全部戯言だと理解っている。
そのくせ、こんな絵空事を言うのだ。
ギアッチョは、メローネの腕を強く掴んだ。
短い爪が皮ふに食い込む。
「オレが妊娠しないと、タカくくってんな」
「………………」
「そう思うなら、出してみろよ」
ギアッチョの挑戦的な唇が、目玉が、爪が、言葉が。
メローネの感情を落雷のように揺さぶり、溶岩のように煮え立たせる。
(これ以上、サイコウってことは、この世にないね!!!)
「ギアッチョ、サイコウ」
メローネは腕の下にいるギアッチョを思いっきり抱きしめて。
けれど、イク瞬間にギアッチョの中から退いた。
虚空に放たれた命の源が死滅する。
「ギアッチョ、ダイスキ」
「あぁ…………」
腕の中に愛しい愛しい、生ある肉体を抱きしめたまま。
(今日のギアッチョはなんでこんなに悲しそうなんだろう)
今日、ギアッチョに何があったのか。
行為が終わったらそっと聞いてあげようと、メローネは思った。
【END】
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