ボスリゾで「……嘘つき」から始まる小説 |
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「……あなたは嘘つきだ………っく…あ…」 「口を慎め、リゾット・ネエロ。この私を嘘つき呼ばわりするとは」 固く鎧戸を閉ざした暗闇の中に、粘膜の擦れる水っぽい音がやけに鮮明に聞こえる。うめき声を噛み殺しながら、リゾットは見えない相手に向かってもう一度言った。 「嘘つきだ」 「私がいつ、嘘をついた?」 「あなたの要求を飲めば……ソルベとジェラートは返すと言った………うっ…あ……」 「返したではないか。約束通りに」 リゾットはシーツを固く握りしめ、襲い来る圧迫感から逃れようと体をよじらせた。だが抑えられ、強く捕まれた体は一方的に蹂躙される。 一筋の光さえない真の闇の中では、相手の顔は見えない。しかも慎重なことに、リゾットは目隠しまでさせられている。 たかが暗殺者が拝める尊顔ではないのだと、男に会うときはいつでもこうだった。 今、リゾットの体を意のままに弄んでいるのは、この組織のボスだ。 「あんな……あんなことをするなど!」 「五体満足で、という条件はつけなかったな?」 ボスが嘲笑う。リゾットはギリリ…と歯を食いしばった。 「この私の命を狙ったのだ。本来ならば拷問の末にむごたらしく殺して見せしめにするところなのだぞ?」 「……っぐ……う……」 「もっと声を出せばいい、リゾット・ネエロ。快楽に耐える必要はない」 「なにを……っ」 「フン。誰のおかげで、薄汚い人殺しが身分不相応なほどの金を稼げていると思っている?」 「…………くっ」 「お前とて分かっているのだろう?」 吐息まぎれにボスがささやく言葉に、リゾットは反論できない。 (ボスの言うことは、間違っていない) リゾット率いる暗殺チームは、社会に適応できなかったはみ出し者の集まりだ。ギャングにすらなれなかった、人殺しで金を稼ぐシリアルキラー揃いである。 幸い、この組織のボスは暗殺者の命がけの任務に理解を示していて、少なくともリゾットが納得して満足するくらいには報酬を与えられている。他に生きる道のないリゾットは、ボスの理解に感謝しているくらいだった。 だが、リゾットの部下であるソルベとジェラートがバカな真似をしでかした。金と名誉にくらんで、あろうことか組織のボスを暗殺しようと企んだのだ。ボスの力は強大で、二人は易々と返り討ちにされてしまった。 二人の部下の命を救う代わりに、ボスは暗殺チームのリーダーに誠意を見せるよう要求した。そして今の状況に至る。 「あいつらは私の顔を見てしまった。命は救ってやるが、あいつらの腐れた脳味噌に二度と私の顔が浮かばぬよう、それなりの『対処』はさせてもらった」 ソルベは麻薬漬けにされて、一日のほとんどをぼんやりしたまま過ごしている。時折幻覚を見ているのか、体がバラバラになるような痛みと感覚に教われて苦しんでいるのが見ていられない。 ジェラートは舌を抜かれ、肺を片方潰されてしゃべることができなくなってしまった。ソルベの世話をしてやっているが、何かあるとすぐに呼吸不全に陥って死ぬような苦しみに見悶えている。 そんな、生きている甲斐のないような二人でも、命を救われた大切な仲間だ。リゾットは彼らをアジトに住まわせ、面倒を見てやっていた。 (殺された方がましだったのだろうか?……いや、そんなことはない。生きていることに意味がある) リゾットはそう考えている。たとえ苦しみを伴おうとも、彼らがこの世に在る、ということが正義なのだ。その存在そのものが重要なのだ。 友を、仲間を、家族を、死なせたくない。それがリゾットの望みだった。 ソルベとジェラートがたとえ生きることに絶望しても。 こうしてボスの慰み者となり、辱しめを受けても。 「う、あ……あっ……く…っ」 「イっても良いのだぞ、リゾット」 「く、うっ、あ、……あっあ……あああああーっ!」 それでも、生きていてほしいと。 リゾットは願った。 【END】 |
ツイッターの「リプくれたら指定のカプで小説書く」企画。 ボスリゾ、ちょっと未来の違うバージョンです。ボスリゾは大好きなんだけど、「ソルジェラの処刑前か以後か」によって全然違ってきて、もしもソルジェラがああいう死を迎えてしまったらそれでもなおボスに抱かれるとかは無理なんじゃないかなぁと思いました。だって仲間を惨殺した男に抱かれるとか……なあ。いくらリゾットいじめが楽しい私でもそこまではできないってものです。辛すぎて……。なので、ソルジェラがかろうじて生きているか、あるいはソルジェラ前かということになります。普段はソルジェラ前で書いてるので、今回はパラレルバージョンで。しかしボスリゾはレイプばっかりですね。仕方ない。 |
| By明日狩り 2013/03/15 |