他愛の無い話 |
| プロシュートが襲撃された話 ある夜 アジトのソファでうとうとしていたら したたか頭を殴られた 「何者だ!」と怒鳴ると 「敵だ!」と答えたので 懐からナイフを取り出して投げつけた パチン! 敵を自称するそいつは 音を立ててはじけ飛んだ それでそのまま寝てしまった リゾットが子供を背負った話 月明かりのきれいな夜に 街を歩いていると 足元に鉛筆が一本転がってきた おかしいとも思わずに拾い上げると 「それ あたしの」後ろから 少女が追いかけてきた 「女の子が 鉛筆なんぞ持つのか」 「そう 勉強をしているから それに 絵 も描くの」 なるほど それならばと思い 鉛筆を返してやった それから子供を背負って家に帰った ギアッチョがメローネに電話した話 何度もかけてるんだが メローネが一向に電話に出やがらねえ 「いい加減にしろ!」 携帯電話に向かって怒鳴りつけると「そんな大きな声出すなよ」とたしなめられた 「オメーが電話に出ないのが悪い」と反論すると メローネは何がおかしいのか けらけらと笑った 「じゃあ 次は出ることにするよ」「次じゃなくて 今出ろよ」 イルーゾォが罠を仕掛けた話 月が完ぺきにまん丸いまま空に昇っていたので おれはなんだか腹が立って 歩道の上に鏡を置いてみた 案の定 お月様はそれを不審に思って 覗き込んできた 「かかったな!」おれはそう言って お月様を鏡の中に引きずり込んだ 「かかってないさ」何かがおれの手の中をすり抜けて逃げた よく見れば それはただの野良犬だった 畜生め! ホルマジオが帰れなくなった話 ある夜 お月様の黄色い光を浴びながら歩いていたら 自分がどっちへ向かっているのかわからなくなった 「おい ちょっと黄色すぎやしねえか?」とお月様に愚痴をこぼしたら 「こんなものだろう」とはぐらかされた しょーがねーから そのまま黄色い道を歩いていて ついに迷っちまった しょーがねーなぁ ペッシが星とケンカした話 無性にイライラしたので 道端の石ころをコツンと蹴り上げた 「痛い! 何をする!」と石ころが悲鳴を上げた 「あんなところに寝ていたお前が悪い」「いや蹴ったお前が悪い」と言い合いになり とうとう殴り合いになった (負けたら兄貴に叱られる) そう思って繰り出した拳がガツンと当たり 石ころはヒュウと空へ飛んで行って そのまま流星になった ソルベとジェラートが消えた話 「いつまでこんな場所にいるんだろう」 「あきるまでじゃないか」 「屈辱はないのか」 「ないことはないだろうさ」 「どうするつもりだ?」 「あきたから 行こうかと思うのだ」 「それじゃあ オレもついて行こう」 【END】 |
インタビューズで「昔は文体に凝ってたことがありました」と回答したところ、「どんなものか見てみたいです」というリクエストを頂きました。もう昔の話だし、文体模写なんて久しくやっていなかったのですが、せっかくだからと挑戦してみて、そして失敗した作品がこちらになりますorz いやー、日常的に文学に触れていないとなかなか文体模写もできないものですね。付け焼き刃で太宰と足穂を読んで、今すぐできそうなのが足穂だったので「一千一秒物語」を意識してパロディしてみたのですが、うまくいかなかったなぁ。まあ、あんまりがっかりしないで「こんなもんかww」と思ってご笑覧頂ければ幸いに存じます。 |
| By明日狩り 2012/06/02 |