神乃木の初夢







     こんな夢を見た。

「ちひは生倉センパイのところへ行きます。ちひっ」
 ちひが突然、そんな事を言い出した。


「な……なんで。どうしてだ、ちひ?」
「だって生倉センパイがちひに来て欲しいと言うのです。だから、ちひは行くのです。今までお世話になりました」
 ちひはぺこりとお辞儀をした。


 見れば、ちひの服だのぬいぐるみだのが全部、ちひの家(という名のクッキー缶)に納められている。
 全部、持っていく気らしい。

「待て、待てよ、ちひ」
「ちひっ、どうしてですか?」
「こんな急に出て行くなんて……。オレが何か悪い事でもしたかい?」
 さすがにあせりが隠せねえ。


 けれどちひは、不思議そうな顔で首を傾げるばかりだ。
「ちひ〜? 神乃木センパイは何にも悪い事してないのです」
「じゃあ、何で出て行くんだよ」
「生倉センパイがちひに来て欲しいと言ったからなのです。さようなら。ちひっ」


 ちひはやっぱりお辞儀をして、部屋を出て行こうとする。
「ちひ、待て!」
 オレはちひをつまみ上げた。
「ちひゃ! せくはらですせくはらっ!」
「これはセクハラじゃねえ」
「そうですか、ならいいです」


 オレの手の上で、コネコちゃんはおとなしくしている。
「行くのか、どうしても?」
「だってちひは行くって約束しちゃったのです」


「そんなの、アリかよ……」
 オレはものすごく動揺していた。
 考えた事もなかった。
 ちひはいつでも、オレのそばにいるもんだとばかり思っていた。
 こんなに簡単に、いなくなっちまうもんだったのか、アンタ?




「なあ、コネコちゃん」
「ちひ?」
 オレは手の上の小さなちひを行かせないためにはどうしたら良いか、本気で考えていた。