フォースの世界     BY明日狩り




「とうとう捕まえたぞ!」
「ぎゃああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!??」

 完全に油断していた。
 ぼけーっと寝そべってテレビを見ていたクワイ=ガンは、口から心臓が飛び出るかというほど大声で叫んだ。

「こら、品がないぞ。落ち着きなさい」
「うわわわわなんなんんあん何だ何だ!?」
「まったく……みっともないな。これが久しぶりの再会かと思うと、悲しいぞ、パダワン」

 クワイ=ガンに後ろから抱きついた男は、大きなため息を吐いた。

「ど…………毒マスター!?」
「久しぶりだが、変わらないなお前は。フフフ」

 首筋にしがみついている男を見て、クワイ=ガンの顔色が変わる。ニヤリと口元に笑みを浮かべて、ドゥークーは薄く笑った。

「ど…………どういうこと?」

 手に持っていたせんべいをポロリと落とし、クワイ=ガンは穴の開くほど目を見開いた。

 目の前にいるのは、間違いなく、かつての師であるドゥークーだ。

「あなたが、どうして『ここ』に?」
「なんだ、気付いてなかったのか」

 ドゥークーはやれやれと肩をすくめ、テレビを見た。

「お前、ちゃんとニュースを見ろ。共和国の危機だというのに、『霊界ビフォーアフター』見てる場合じゃないだろう?」
「でもこれ毎週見てるし…………って、マスター、まさか…………?」
「当たり前だ。そうでなくて、なぜ『ここ』に来られる?」

 『ここ』とは、言うまでもない。フォースの世界だ。
 生者が来られる場所ではない。

「マスター…………」
 肉体を失ったドゥークーを改めてしげしげと眺め、さすがに言葉を失う。
「お前が見つけてきた『選ばれし者』に、ものの見事にやられたよ……まったく」
「アナキンが?」
「だから『霊界ビフォーアフター』見てる場合じゃないというのに」

 あきれるドゥークーに、クワイ=ガンの顔色はますます青くなる。

「お前のフォースを感じて、ここに来たのだよ。もう死ぬまで一緒だぞ、クワイ=ガン」
 偉大なるジェダイマスターであり、クワイ=ガンの師匠であったこの男は、どういうわけかクワイ=ガンを猫かわいがりしていた。死んでもその傾向は変わらないらしい。
「ちょ…………うざいんで離れてください」
 まとわりついてくるドゥークーのフォースをおしのけて、クワイ=ガンは慌ててテレビのチャンネルを替えた。

「…………あーあ、なんか終わってるし」
 裏番組でやっていたらしい『緊急特番! 銀河共和国崩壊の危機』はもう終わってしまっていた。最近どのチャンネルを見ても戦争ばかりですっかり飽きてしまい、番組チェックがいい加減だったのだ。

「マスター、オビ=ワンとアナキンはどうなりました?」
「お前のように、フォースになっても怠惰な男には教えてやらんよ」
「うぬぬぬ…………」
 かわいげのない毒マスターに歯噛みして、クワイ=ガンはチャンネルを次々に替える。
 どうやら大変なことになっているらしい。

「…………あ」

 と、そのとき。

『…………ガン…………マスター……ワイ=ガン……』

「オビ!?」

『……てください…………スター…………ン・ジン…………』

 どこからか、弱弱しい声が聞こえてくる。
 微弱な、頼りなげなそのフォースは、けれど確かにクワイ=ガンの耳を、いや、心を捉えた。

 忘れもしない、あれはオビ=ワンのフォースだ。

「オビ=ワンが私を呼んでいる! 行かなくては!」
「まあまあ、落ち着きなさい。師匠にお茶の1杯でも出さないか」
「勝手にお茶でも何でもやってください。私は行かねばっ!」
「せっかちな男だな、クワイ=ガン」

 ばたばたと出て行くクワイ=ガンを見送って、ドゥークーはクックッと笑った。
 どうせ、時間は無限にある。

「ま、仲良く孫弟子たちの生き様を見守ろうではないか……なあ、クワイ=ガン?」

 フォースになって現世を見守るだけ、というのも悪くはない。

 肉体は滅びても、精神は滅びない。
 それが我々、フォースの世界。




<<END>>




復帰第1作目が毒桑というのもどうなのか(笑)

お久しぶりです! EP3ですね! ですねですねっ! 熱い夏が来ましたねー!
心はクワオビやアナオビやパルアナやドククワでいっぱいです! 頑張るぞー!

とりあえず最後の最後に「ルーカス公認クワオビ宣言」はどうなのか。そんなのありかー!と叫びつつ、せっかくルーカスから賜った設定なのですから、美味しくいただきます。やっぱりヨーダはクワオビ派だったんだ!
フォースになったから毒伯爵とクワイはいちゃいちゃするといい。でもクワイはオビに呼ばれてタトゥーインに行ったきり帰ってこないと思う。呼び出したら絶対にマスター帰らないぞ。もうこの先ずっと死ぬまでオビ=ワンにとり憑いて離れないぞ。