| やばい、と思ったが身を隠すまもなく発見されてしまった。 「おお、私のパダワンよ」 マスターに見られていることに気付かないということはあるが、その逆ということは絶対にありえない。少なくともこのマスタードゥークーに関して言えば、当人いわく「私が誰かの気配に気付かないということはないのだ」ということになる。 「マスター、何かご用ですか?」 ドゥークーは肩をすくめ、少しばかり悲しそうな顔をした。 「休日にパダワンに出会って声をかけるには、何か用事があるときでないといけないのかね」 「いえ、そういうわけではありません」 休みの日くらいは独りでゆっくりしたかったのです、とはさすがのクワイ=ガンも言えない。 奔放で優秀なパダワン、クワイ=ガン・ジン。 マスタードゥークーのことが嫌いというわけではない。 苦手なのだ。 「私とて、休日くらいパダワンに甘えさせてやることにやぶさかではないぞ?」 「要りません(私の容姿を見てから言えこのボケマスター)」 にっこり笑って心で毒づく。 これが年齢ヒトケタのパダワンならまだ分かるが、クワイ=ガンはもう18歳の立派な青年だ。どう考えてもマスターに甘える年頃ではない。 「まあ、そう言うな」 にこやかに近寄ってきて、友好的に肩を抱いてくる。 そしてついでに反対の手で顎をつかむ。 「おや、もう髭が生えてきたな」 「髭なんてずっと前から生えてますよマスター」 苦笑いしながらドゥークーの手を離そうとするが、離すどころか体重をかけられて妙な体勢に持ちこまれる。気がつけば腰を抱かれ、マスターの顔がすぐそこまで迫っていた。 「いきなり社交ダンスの練習でもしているんですか、マスター?」 「いや、お前への情熱を表現しているのだが」 「ご遠慮願います。私にも社会的な立場というものがありますので」 ここはどう考えてもジェダイテンプルの中庭で、青空も晴れやかな午後のひとときだ。人目もある。 「社会的立場なら私にもあるが」 「ならこんなことは遠慮して欲しいものです」 「私の立場はこんなつまらぬことで悪くなるような脆弱なものではないよ」 (そーゆーことが言いたいんじゃねーンだよ、このボケオヤジッ!) ぐぐぐ、とドゥークーの身体を押し返して、なんとか元の姿勢に戻る。腰に回されていたマスターの手がすかさず尻を撫でるのを阻止して、精一杯皮肉を込めた笑顔を作る。 「申し訳ありません。私の立場は脆弱なのです」 「まったく、可愛らしいパダワンめ」 くっくっく、と嬉しそうに笑うマスターの脳みそをいっぺん解体してやりたい、とクワイ=ガンは切実に思った。しつこく撫で回されている自分の尻に不快感を感じながら。 「どこへ行くのかな、愛しのパダワンよ」 「別にどこというわけでもありません(アンタのいないとこならな)」 「では私について来なさい。美味しいマフィンを出す店を知っている」 歩き出すクワイ=ガンの横にぴったりとくっついて来る。逃げようとしてもこのマスターから逃れることは恐らく不可能である。物理的にも、心理的にも。 傍若無人なマスターをどうすることもできず、クワイ=ガンはこんなとき己の修行の足らなさを深く深く呪うのであった。 <<END>> |
| 意味はないです。ファンアートのむさい師弟を見てたら書きたくなりました。ドゥークー大好きクワイ=ガン大好きな忍城さんに捧ぐ。 |