| 先日のことだ。 僕はマスターと一緒に街を歩いていた。そうしたら向こうからやたらおっぱいの大きなお姉さんが歩いてくる。しかも腕から腹から素肌出しまくりで、大事なところしか隠れてないようなすごい衣装を着ていた。 僕はこっそりマスターに、 「ねぇマスター、すごいですね」 と耳打ちした。 そうしたらマスターは不機嫌そうに 「なにが」 と言っただけで僕の顔を見てもくれない。 僕には分かっていた。マスターがこういう顔をするのは、都合の悪いことを隠してるときだ。マスターはまず間違いなく、照れて困っている。微妙にお姉さんから視線をそらしているのが何よりの証拠だ。 僕はしつこく食い下がった。 「ねぇ、すごいですよね、あのお姉さん」 「アナキン、人をじろじろ見るもんじゃない」 「だってお腹も足も丸出しですよ?」 「止めないか。失礼だろう」 「おっぱいなんかスイカみたいにでっかいですよ?」 「アナキン!」 マスターはちょっとだけ大きな声を出して僕を制した。怒ろうとしているのと恥ずかしいのと照れているのと困っているので微妙な表情がマジ可愛い。マスターは僕を睨み上げて、あたりに気を遣いながら厳しくこう言った。 「みだらな妄想はやめろ!」 それからぷいっと僕に背を向けて、また歩き出した。 で、重要なのはここなんだけど。 僕、マスターのこの一言がめちゃくちゃ耳に残って、まぁぶっちゃけていうと「感じちゃった」わけ。 だってお堅いマスターの口から「みだらな」とか言われちゃったんだよ? それだけでなんかぞくぞくしちゃって、当然その夜のおかずはマスターの「みだらな妄想はやめろ!」だったさ。 マスターのあの、高くも低くもない素敵ヴォイスで、「みだら」だよ? いっちょまえにヒゲ生やしてるけどチェリーみたいに可愛い唇で、「妄想」だよ? しかも怒りたいのに照れちゃってちょっぴり引け目になった表情で「やめろ」だよ? 並の性欲を持つ若者なら、ご飯6杯は軽くいけると思うね。 これって絶対にマスターが悪いよ。健全な青少年を惑わしてるよね。無意識とか朴念仁とか、そういうの言い訳にならないと思う。もはや罪。絶対にやばいよ。 それで僕が何か言うと、頭ごなしに怒鳴るワケじゃん? も少し自分の魅力に自覚を持って、うかつなことは言わないように気を付けてもらわなくっちゃ、こっちもやってらんないよ。 だからマスターに、 「マスターの口から『みだら』とか言われたら興奮しちゃうんですけど」 って忠告したら思いっきり蹴り飛ばされた。 それってあんまりひどくない? 人として。誰かマスターに言ってやってよ。もう僕はお手上げだよホントに。 <<END>> |
| 変態アナキン。頑張れ性少年。 |