| 「ホラ、じっとしてなさい」 「してますよ」 「どうしておまえはそう、口答えばっかりなんだ?」 オビ=ワンは眉間にしわを寄せて、椅子に座ったアナキンを見上げた。 「イエース、マスター」 くすくすと笑いながら、アナキンが答える。 オビ=ワンは「まったく……」とつぶやいて、編みかけのアナキンのブレイドをちょっと引っ張った。 「だいたい、いまだに独りでブレイドが編めないなんて恥ずかしいと思わないのか?」 「思いマース」 元気よく答えるアナキンを睨みつけ、それからやれやれ、と肩を落としてオビ=ワンは砂色の髪を指で弄んだ。 パダワンの証であるこのブレイドを、アナキンはいまだに編めないでいる。 独りでやらせるとどうしてもぐちゃぐちゃに歪んでしまい、恥ずかしくて表に出せなくなる。 「まったく……手先は器用なんじゃなかったのか?」 機械をいじったり、壊れたドロイドを修理したりするのがアナキンの趣味である。 趣味、といえば聞こえはいいが、大量のポンコツドロイドをジェダイ聖堂に持ち込んだり、ジェダイオーダーが保有しているスピーダーを勝手に改造したりするので、オビ=ワンには「悪癖」と評されている。 しかしどんな旧式のドロイドでも手持ちの部品で修理してしまえるアナキンの才能と腕は、オビ=ワンも認めざるを得なかった。 そんなアナキンがたったひとつできないのが、ブレイドを編むことなのである。 「だって僕は機械じゃないもの」 椅子に座ってちょっとだけ足を揺らしながら、アナキンはご機嫌な様子でにこにこと笑った。 「器用なのは機械を扱うときだけなんですよ」 「おかしな理屈だ。リードだのコードだの、機械の配線を魔法のように繋ぐお前の言葉とは思えないな」 「あれ、僕の技術って魔法みたいですか? 嬉しいな、オビ=ワンにそんな風に言われるなんて」 アナキンは嬉しそうに笑って、オビ=ワンの頭をなでた。 不機嫌な犬のように頭を振って、オビ=ワンが抗議の目でアナキンを見上げる。 「こら、マスターの頭に軽々しく触るんじゃない」 「軽々しくだなんて! こんなに愛情を込めてなでているのに!」 「だから私はマスターなんだぞ!? 子供や犬ころじゃないんだ!」 「何を言ってるんですか? そんなことわかってますよ!」 力いっぱい反論するパダワンに、もう言葉を返す気力も失せる。 オビ=ワンはぐったりして、髪を編む作業を続けた。 「まったく……お前ときたら……」 「ほらほら、そんなにイライラしないで。……何を怒ってるんだか知らないけど」 「…………………………」 余計なことを言うとさらに疲れる。 オビ=ワンはただもくもくとブレイドを編みつづけた。 「ばかパダワンめ」 ボソッとつぶやいたオビ=ワンを無視して、アナキンは愛しそうにオビ=ワンを見下ろした。 「大好き」 「……何がだ?」 顔を上げずにオビ=ワンが尋ねる。 砂色の髪を注視していて、アナキンの目がじっと物言いたげにオビ=ワンを見つめていたことには気づかなかった。 「大好きですよ」 「だから、何がだ? ブレイド編むのがか?」 オビ=ワンが不信げな顔でアナキンを見上げる。 アナキンはブレイドをオビ=ワンにつかまれたままで、すっと目を細めて笑った。 「そうですね、ブレイドかな」 「妙な奴だな」 「そうかな……ちっともおかしくないよ。ねぇ、オビ=ワン?」 そしてブレイドの根元をつまみ、ちょいちょいと引っ張って見せる。 何のことやらわからないオビ=ワンは小首をかしげて、まあいいか、と視線を落とした。 その柔らかそうな髪に包まれたオビ=ワンの頭を、アナキンはすかさず抱きとめる。 「あっ!?」 「オビ=ワン……」 オビ=ワンの耳元に唇を寄せ、湿っぽい息を吹きかける。 「な、アナキンッ?」 「ホラ……」 慌てて腕を振りほどこうとしたオビ=ワンは耳たぶを甘く噛まれて、ぞくっと身を震わせた。 すかさずアナキンの両腕がオビ=ワンの体を抱き上げ、するりと着物の下に指が入り込む。 「ひあっ!?」 手を拒もうとじたばたするオビ=ワンをものともせず、アナキンは着物の胸元をはだけさせた。 さらに胸元から両肩をなでるように手を這わすと、手品のようにオビ=ワンの上着が床に落ちる。 「な、あ、あ……」 「オビ=ワン、大好き」 首筋を生温かい舌先がちろり、とくすぐっていく。 鎖骨に柔らかく歯が当たり、指が器用にズボンのベルトを迷うことなく外す。 止めるもののないオビ=ワンのズボンはそのまま膝の辺りまで落ちた。 「やめなさいっ!!」 「いたっ!」 渾身の一撃を頭に加えられて、アナキンの手が止まる。 「ばかあほパダワン! いい加減にしろ!」 「何するんだオビ=ワン! これからじゃないか!」 「このクソパダワンッ!」 マスターの「グーでパンチ」がアナキンの頭を5回ヒットする。 そしてずり落ちた服を取るとオビ=ワンは、 「反省しろこのバカ!」 と捨て台詞を残して逃げていってしまった。 「あーあ」 今日はやれそうだと思ったのに、とアナキンはぼやいて、愛するオビ=ワンが去っていった扉を恨めしげに眺めた。 殴られた頭をなで、つまらなそうにほっぺたを膨らませる。 「……ま、いっか」 オビ=ワンの怒った顔ってかわいいな〜、などと性懲りもなくつぶやきながら、アナキンは編みかけだった自分のブレイドをさっさと編み上げた。 紐で器用に端を結び、くるくると指で弄ぶ。 「僕がブレイドを編めないのは、オビ=ワンの前でだけなんだけどね」 そしてくすくすと独りで笑う。 「……くしゅんっ」 服の乱れを気にしながら逃げ去るオビ=ワンがくしゃみをしたのがアナキンのせいなのかどうか、定かではない。 <<END>> |
| 狼里左京様より3333HITキリリクです。「オビにミツアミしてもらってるアナキンがオビにいたずらする」というお題をいただいて書かせていただきました。 コメントとしては……うわぁベタベタ。といったところでしょうか。「アナオビにはベタネタが似合うと主張する会」会長としては、どうしてもこういう路線に走ってしまうのです。 さ、左京さんのお気に召せば幸いなのですが……。 |