「まるほどう」
「何ですか?」
「今日は何の日か、知ってるかい?」
「…………さあ。あの、何ですか?」
「クッ……アンタはすぐに『何ですか』って訊くんだな」
「すみません……でも、何ですか、本当に」
「聞いたら、セキニン取ってもらうぜ……?」
「セキニン!? …………うー、いいですよ。セキニンでも何でも取ってあげますから! 男らしく!」
「じゃ、教えてやるぜ。そのかわいい耳を貸しな、まるほどう………………」











 (…………………………今日はオレの誕生日、なんだぜ?)














「そ、そうだったんですか! 困ったな、僕何にも用意してないし……。そういうことは先に言ってくださいよー」
「かまわねえさ。アンタがそばにいりゃ、それだけで充分だぜ」
「うう〜、そ、それじゃ…………その大きな耳を貸してください、ゴドーさん」
「クッ……ちゃんと返してくれよ?」
「当たり前ですよ! ………………………………」












 (じゃあ、プレゼントは僕、です。あげます、ゴドーさんに……)












「アンタなら、夕べもその前の晩も、たっぷりいただいちゃってるぜ?」
「うわーっ言わないでくださいよそういうことはーっ! ……ううう、そ、そうですけど……他に何もないんですよ……」
「かわいいコネコちゃんだな。よしよし、赤いおリボン付けてお嫁に来てくれるのかい?」
「リボンはないですけど……その……そばにいさせてください」
「…………そいつは、いつまでだ?」
「いつまで?」
「いつまで、そばにいてくれる?」
「そうですね…………永遠に、って言いたいところですけど、言いません」
「このコネコは案外とケチなんだな」
「ケチじゃないですよ。永遠、なんて言って欲しいんですか?」
「………………………………」
「永遠、なんて安物の言葉は使いたくないんです。そんな甘い幻想を囁けるほど、綺麗じゃないんです。僕は」
「あんまり卑下するなよ。じゃあ、なんて言ってくれるんだ?」
「そうですね。じゃあ、ゴドーさんの誕生日プレゼントは、こうです」












「この次の誕生日まで、一緒にいてあげます」












「おいおい、一年間契約なのかい?」
「そうですよ。来年も、逃げないでちゃんと僕のそばにいてください。そうしたらまた、同じことを言ってあげます」
「更新も可能ってことかい。……呆れた現実派のコネコちゃんだな」
「ええ、まあ、あんまり夢は見ないほうです」
「もうちょっと夢、見させてくれてもいいんじゃねえかい?」
「…………でも、これが、僕の誠意ですから」
「誠意」
「一生を捧げますって言っても、永遠に愛してるって言っても、誰も証明できないでしょう。そんな果たせるかどうかも分からない約束なら、しないほうがいい。
 僕は、たった今、できることをしたいんです。十年後なんて僕もアナタもどうなってるか分からない。でも、一年後なら何だかまだ見えそうな気がするんです」
「…………そうだなぁ」

「この一年間、僕は精一杯、アナタのそばにいます。軽はずみな永遠なんかより、ずっと誠実でしょう?」

「アンタも、こう見えていろいろと考えてるんだな」
「こう見えてね」
「そうか…………。永遠なんてどこにもないんだもんな」
「そうです。永遠なんて嘘なんですよ。そんなものより、もっとちゃんとしたものをあげたいんです」
「何だか言いくるめられた気がするぜ。……このゴドー神乃木様ともあろうものが」
「ま、僕はこう見えても成歩堂法律事務所の所長ですからね」
「やっぱり言いくるめてるんじゃねえか」
「ち、違いますよ。誠意です」
「本当かね」
「本当ですよ」
「じゃ、今できることでソイツを証明、しちゃってくれよ?」
「……………………い、いいですよ」
「よしよし、コネコの舌でかわいく舐めるんだぜ」
「いきなり元気になりましたね……ゴドーさんってエッチだなぁ」
「クッ、他人事みてぇに言うじゃねえか」
「あ、や、そこ……っ……んんっ…………」
「ほら、元気になっちゃうのはアンタも一緒みたいだぜ?」
「意地悪…………しないでくださいよ…………んっ」
「かわいいぜ、まるほどう…………」







 …………………………………………。







「ねえ、ゴドーさん」
「何だい」
「大好き」
「クッ…………よせやい」






<END>