ラフ#01「師を失う」     BY明日狩り





私は死んでいるのだ、と何度も呟いた。

何度も、何度も、自分が生きていると感じたときにはいつでも。

私は死んでいる。

私は死んだのだ。



絶望したとき。

苦しいとき。

辛いとき。

のみならず。

嬉しいとき。

楽しいとき。

優しくなれるとき。



私は死んでいると。



それが私の精神安定剤。



もう私はここにはいないのだと、世界を上から見下ろしてほっとする。

動いている私の抜け殻。

それなりに任務をこなす若きジェダイナイト。

ドロイドにも似た。

まやかしの人格。

そう思うと、ほっとする。



私は死んでいるから。

ここにはいないから。

だから、笑ってもいい。

だから、幸せでもいい。

死んでいるから。

本当は、死んでいるのだから。



何度も何度も飲み下す精神安定剤。

私は死んでいる。

私は死んでいる。

私は死んでいる。

私は死んでいる。



弟子を育てて、責務を果たして、笑って、叱って、

やるべきことをやっている。

やるべきことをやっているのだから、

本当の私が死んでいることくらい、許してくれてもいいだろう。



感情が動いたときは。

高い所から見下ろして精神安定剤。

私は死んでいる。

そうして、ほっとする。



マスター。

あなたが生きていない時間を生きるのは

あまりにも苦しいから。



自分が生きていると感じたときは。

遠くを見つめて精神安定剤。

私は死んでいるんだよ。

生きなくていいんだよ。

私が本当にそうしたかったようにさせてください。

マスターの後を追って、共に命果てて。

甘美な妄想。

私は死んでいる。

死んでいていいよと自分を許す。



だから私は自分を許して。

自分の中でだけ、自分を殺す。

お前は死んでいる。

ここにいるのは死にぞこねた幻なのだと。

そう思わなくては気が狂う。



心躍る瞬間は、笑みがこぼれるひとときは、熱くたぎる怒りの刹那は、

深呼吸して精神安定剤。

私は死んでいる。



誰にも言えない、私の秘密。

私は死んでいる。