どきどき     BY明日狩り

 マスターは大人だ。
 すごく大人、で、立派。
 常識があって、ときには常識をくつがえす強さもあって、自分の正義を知っていて。
 だから僕はマスターが好き。

 でも、ちょっとさみしいときもある。

「オビ=ワン、いい子だな」
 頭を撫でてもらうと嬉しい。

 でも、嬉しいだけじゃすまないときもある。
 嬉しくて、嬉しくて、もっとマスターが欲しくなるときがある。

 抱き付いても、足らない。
 ほおずりしても、足らない。
 唇にキスしても、足らない。

 その太い腕で力いっぱい抱き締められたい。
 ごつごつした指で身体をまさぐられて。
 身体がきしむくらい引き寄せられて。
 大好きなマスターの熱を体で感じたい。






「どうしたオビ=ワン?」

「ひゃあっ!」
 そこまで考えていたらマスターに声をかけられて、心臓が止まるかと思った。
「おいおい」
 マスターの方が驚いたみたいで、ばったみたいに飛び上がった僕を苦笑して見ている。腕を組んでちょっと首をかしげて、大きな身体の上の方でマスターの笑顔が僕を見下ろしていた。
「な、なんでもありませんマスター」

 イヤラシイコト考えてました、何て言えるわけない。
 ましてや。
 
 イヤラシイコトしてください、なんて!!

「言えません!」
「何を……だ?」
 怪訝そうなマスターの視線が恥ずかしくて、僕は逃げ出した。
「だから言えませんッ!」

 残されたクワイ=ガンは独り、首をかしげる。
「だから、何をだ?」







 ばたばた廊下を走っていたら呼びとめられた。
「オイ、廊下を走るなよ」
「すみません、マスター……」
 どのマスターに叱られたのかと思ってよく見れば、

「……なんだ、ブルックか」
「なんだはないだろ、お前が走ってたのがいけないんだ」
 ブルックは昔から何かと僕に意地悪をする、嫌な奴だ。でもパダワンになってからは気の合うケンカ相手になってきたというか。まともに争える相手になったというか。
 ……どのみちケンカ相手なのは変わらないんだけど。

「えらくフォースが乱れてるな、お前」
 ブルックがニヤニヤ笑うから、僕はなんとなく心を読まれた気がして、かあっと顔が赤くなる。だいたいブルックなんかが心を読めるわけはないんだけど。
「なんかあったな。わかった、クワイ=ガンだろ」
「なっ!」
 いきなり核心をつかれてますます顔が赤くなる。
「あははは、赤くなってる」
「うるさいうるさいっ! お前に関係ないっ!」

 もう否定することもできない。僕は恥ずかしい思いでいっぱいになりながらブルックの脇を抜けようとした。
「待てよ。何があったんだ?」
「お前に関係ないだろ!」

「あいつに犯されたのか?」

 あっさりとそういうことを口にするブルックの神経が信じられない。体中の血が頭に上がって、でも頭の中はもう真っ白になってて。僕は怒りと恥ずかしさと苛立ちと、いろんなもので興奮しまくってた。

 だから自分が何を叫んだのか、分からなかった。

「してくれるわけないだろ、そんなことっ!!」

「……ふぅん。『してくれる』わけないんだ?」

 はっと自分の失言に気付いても、もう遅い。ニヤニヤ笑うブルックにもう返す言葉もなかった。
「じゃ、して欲しいんだ?」
「……………………」
「でも、してくれないんだ。マスター・ジンは?」
「……………………」
 唇を噛んで、ブルックをにらむ。握った手がぶるぶる震えた。屈辱が胸いっぱいに広がる。

 僕がいかに下等な欲望の持ち主であるか。
 そしてその愚かな欲望を満たされないまま、疼きを隠して生きていることを。

 見ぬかれてしまった。

「マスター・ジンはそういうとこ、意外と真面目そうだからなぁ」
「…………ほっとけよ」
 それだけ言うのが精一杯だった。僕はブルックの目を見ないようにうつむいて、涙をこらえるのに必死だった。
「おい、待てったら」
 いつもならこれで馬鹿にされて終わりなのに、今日はしつこく食い下がってくる。どうしてこういうシリアスな日に限って、こいつはしつこいんだ?

 無視して行こうとすると、肩をつかまれた。
「オビ=ワン。お前にいいものやるよ」
「…………?」
 そんなこと言うブルックは珍しい。ちょっと疑いの眼で見ると、ブルックの目はいたずらっぽく笑っている。
「すごい使えるから」
「何が?」
「安心しろよ。変なものじゃない。……変なものだけど」
 ブルックの言っていることは良く分からない。

 秘密っぽく言葉をはぐらかすブルックについて行くと、あいつは自分の部屋に入って行って、変なビンを持ってきた。ゼリーみたいなグミみたいな、赤い色をした物体が入っている。
「これ、熱で溶けるからさ。お茶か何かに入れてやんなよ」
「だから何……」

「媚薬だよ、媚薬」

 当たり前のことのように言うブルックに、内心驚いた。
 そんなものあるんだ、と思う。
 ダウンタウンの裏路地なんかで麻薬と一緒に売ってるって噂には聞いたことがあるけれど。

「どこで手に入れたんだよ」
「そんな野暮なこと聞くなって。お前はクワイ=ガンとやれればいいんだろ?」
「……っ!!」
「まあまあ、キケンなものじゃないからさ。持っていけって」
 ブルックは中からスプーンに半分くらいの量のゼリーを取り出して、セロファン紙に包んでくれた。
「ほんとに大丈夫……か?」
「当たり前だよ。これでクワイ=ガンの身に何かあったら、俺が責任取らされるんだぞ?」
「……うーん」
「騒ぎになったら、お前はどうせ俺から薬をもらったってチクるんだろ?」
「うん」
「ったくムカつくよなお前。とにかくこれがキケンなものじゃないってことだけは保証するから」

 安心して使えよ、とブルックは笑って僕を送り出してくれた。
 僕の手の中には赤いゼリーが震えている。僕はこれを使うべきかどうか、長い廊下を歩きながらずっと考えつづけていた。






 マスターは今日も仕事が忙しかったらしい。
「まったく評議会の連中と話をすると、疲れるな」
「だってマスターが人の話を聞こうとしないからでしょう?」
「あっちが私の話を聞かんのだ」
 かたくなに言い張るマスターに苦笑する。どうしてこの人はいつもこうなんだろう。
 ソファにゆったりと座ってぶつぶつ言っているマスターにお茶を出す。
「ご飯はもうちょっと待ってください」
「ああ」
 顔色もフォースも乱れないように気を付けながら、ちょっとどきどきする心臓の音に自分で怯える。

 お茶に薬が入ってることがばれたらどうしよう?

 でもマスターはよほど気に入らないことがあったらしい。僕の出したお茶を一気に飲み干して、まだぶつぶつ文句を言っている。
「規則を守ることに固執するほど愚かなことはない。規則には常に例外があることを評議会は認めるべきなのだ」
 しばらく様子を見てみるけれど、何も変わったところはない。マスターはずっと評議会に対する文句ばかりで、声がだんだん大きくなってくる。
「規則は我々が作った道具だ。道具に使われてはいかん」

 なんにも起こらない。
 あまり期待していたわけではなかったけれど、ちょっとつまんない。
「だいたい規則など解釈次第でどうとでも取れるものが多すぎるのだ。それを守れとはどういうことだ、なあオビ=ワン!? そう思わないか?」
 ご機嫌斜めのマスターにがっかりして、適当に返事をする。

「そうですねマスター」
 するとマスターはいきなり立ちあがって、つかつかとキッチンに入ってきた。
「お前は何も分かっていない!」
「!?」

「だいたいその服装はなんだ?」
 驚いて見上げると、マスターの目がすわってる。

 マスターが、なんかおかしい。

「私はお前をそんなパダワンに育てた覚えはないぞ?」
「そんな……」
 自分の服をよく見ておかしなところがないかチェック。くるりと回ってみても、いつもと同じ普通の服だ。チュニックに、上着に、ズボンに、ブーツに、エプロン……。
「何かおかしなところでもありますか?」
「ダメだ。納得いかん」
 マスターは真面目な顔で首を横に振る。僕は心配になってきて、険しい顔をするマスターを仰いだ。
「ど、どうしたら……」
「こうしなさい」

 マスターはてきぱきと、僕の服を脱がし始めた。

「ふにゃあーーーーーーっ!!」
 驚いたけど、マスターは手品師みたいにあっという間に僕の服を全部……本当に全部脱がせてしまった!
 唯一残されたのは、なぜかエプロンのみ。

「まままままマスターッ!?」
「うむ、よろしい」
 腕を組んで重々しくうなずく。
「よろしくないですマスターッ!」
 だってこのままじゃお尻が丸見えになっちゃう。おずおずとエプロンの両端をつまんでお尻を隠そうと努力したけど、全然届かなかった。それに……お尻を隠すとエプロンが体にぴったりして……その……ばれそう。

「!?」
 意識したら余計に熱くなってきた。
 まずい。どうしよう。
 だからって手で前を隠すわけにいかないし。

「どうしたのかな、オビ=ワン?」
 マスターが優しく笑って言う。笑顔がまぶしすぎて、僕は死にたくなった。
「どどどうもしませんマスター・クワイ=ガン・ジン」
「どうもしていないということはないだろう、こんな状況で」
 マスターが僕の腰を抱いて……ていうかむしろお尻に手を回して、笑う。
「まままままっ!」
「さっきからお前は面白いな」
 あっさりとお尻の割れ目に指を入れられて、本当に死ぬかと思った。

「ふにゃあああああああーーーーーっ!!」
「かわいくていいぞ」
 マスターの顔ときたら優しくて大人で素敵で貫禄があって優雅で。
 それなのに僕ときたらこんな破廉恥なカッコしてて顔は真っ赤で前は……ごにょごにょ。

 もう何がどうなったのやらさっぱりわからない。頭がくらくらする僕を、マスターが横抱きにしてソファに連れて行く。それで僕をソファに横たえて、そっと顔を撫でて、キスをくれた。
「ますたぁ」
「うん、なんだ?」
 声も顔も優しいのに。

 何でマスターの腕は僕の両足を持ち上げた挙句、そこに顔を近づけてるんですか!?

「や、止めてください!」
「何故だ?」
「何故って……マスタぁ……」
 だってエプロンがめくれたら、僕のそこがどんな風になってるかばれちゃう。
 ていうかそれだけじゃなくて。
 ああもう、どうしていいかわかんないっ!

 僕がめちゃくちゃ混乱している間にマスターは僕のエプロンをあっさりと指でめくる。
「おお、すごいな」
「ぎゃあああああーーーーーーーっ! どこ見てるんですかバカバカーーーーーーっ!!」
 じたばたと暴れたら、両手をがっちりとつかまれてしまった。
「暴れるな」
「だってだってだって!」
「だって、じゃない」
「だって〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「うるさい」

 マスターはぴしゃりとそう言うと、どこからか細い紐を取り出した。
 ひくん、と喉が鳴る。マスターがそれを使って、僕の両手を後ろで縛る。
「あ……」
 痛いような酸っぱいような、変な気持ちがする。マスターが僕を、こんなふうにしたことはない。
「マスター……一体何を……」
「お前が暴れるからいけないのだ」
 そう言ってマスターは僕の両足を持って、左右に大きく開かせた。
 僕は息を飲んで、顔を背ける。マスターのため息が聞こえて、恥ずかしくて心臓が止まりそうだった。

 生温かい感触に、びくんと体がはねる。
「ひゃ……やあっ……」
 マスターは張り詰めて熱くなった僕のものに、舌を這わせているらしい。
「そんなとこ舐めちゃ……だ、め……」
「駄目かどうかは私が決めてやる」
 マスターの静かな声に胸がキュンとなる。後ろで戒められた両手のことを思うと、体がいっそう熱くなった。

「はう……ますた……」
 マスターの舌が、下から上へと僕を責め立てる。
 ぬめぬめと温かい、柔らかい、舌。
 厚くて弾力のある、少し濡れた唇。
 それから固くてごつごつしたマスターの指。
 それらがすべて、僕の恥ずかしくて感じやすいところを愛撫する。

「ああっマスターッ」
 息が苦しくて僕は何度も喘いだ。

「いい子だ、オビ=ワン」
 何度も聞いたことのある言葉だけれど。
 今日は何故だか違う。
 だってこう言われて、オナカがキュンってなったことなんか、ない……。

 それから、お尻を撫でていたマスターの手が。

 そっと、間に割り込んできて。

 体の中心に触れた。

「ひああっ、マスター!」
「緊張しない方がいい。リラックスしろ」
 そう言われたって、落ち着いてなんかいられない。

 マスターの指が小刻みに入り口をいじる。
 くすぐったくて恥ずかしくて、足を閉じようとするけどマスターの頭を太腿で挟むだけで。
「こら、大人しくしろ」
「やめ……ますたぁ……」
「反抗するのか? いけないパダワンだな」

 マスターの指が、くいっと、中に侵入してくる。
「あっあっあっ……」
 体が弓なりに反る。

 太い指が、どんどん、体の奥に入って……。

「ほら、第2関節まで入ったぞ? わかるか?」
「わ、わかんな……あうっ」

 マスターの指は止まらない。
 どんどん奥まで、容赦なく入ってきて。
 僕が体を固くして足の指先まで力を入れていても、マスターは一向にお構いなしで。

 根元まで入ったのが、分かった。

「ん……ふぅ……ま、ますたぁ……ッ」
「感じるか?」

 中で指がごりっと動いた。

「うああああっ!」
「いい反応だ、オビ=ワン」

 ごりごりと、かき混ぜられる。

 いやらしい体の中を。

 熱い、オナカの奥を。

「ふあ……あああっ」

 体の中がいろんなものでいっぱいで、どうしていいかわからない。

 それでも何度も何度も、指が熱い中を掻き回す。

「あ、あ、あ……ああっそこっ……!」
「ココか?」
 指を曲げてマスターがこすったところが痺れるみたいで、僕は思わず声を上げていた。

「そこ、そこがイイですマスターッ!」

「素直に言えたな」
 ご褒美だ、と言ってマスターはそこを何度もこすってくれる。

 足先まで痺れて、体ががくがくして。

 マスターが僕のものを舌先でぺロり、と舐めたから。

「ふあああああーーーーっ!」

 僕は熱いものを放ってしまった。

 最初は何が起こったのか分からなかった。

 苦しい息を吐いて、吸って、震える体を落ち着かせて。
 目を開けたら、マスターが顔に付いた白い粘液を指でぬぐっていた。

「あっ、あっ……」

 僕がマスターを汚してしまった。

「元気がいいな、オビ=ワン」

 僕はマスターを汚して……。
 そう思うと涙がこぼれて止まらなかった。

「ま、マスター……ゴメンなさ……」
「独りで達ってしまったからか?」
「ち、ちがっ……」

 マスターはちょっと笑って、それから大きな体で僕の上に乗りかかってきた。
 胸の上にまたがって、僕を見下ろす。
 優雅に服の裾をさばいて、ベルトを外し、自分のものを取り出す。

「ひゃっ」
 マスターのそれは、すごく大きくて、固くなってて……。

「悪いと思ったなら、今度はお前がしてくれるんだろう?」
「は、はいっ」

 縛られた腕が使えないから、口だけでするしかない。
 そう思ったら、また顔に血が上った。

 でもマスターはじっと僕の行動を見守っている。
 迷ってる暇はない。
 僕はできるだけ頭を伸ばして、それでも足りなかったから舌を伸ばして、やっとマスターのものに触れた。

 舌先でちろちろと舐めるけど、これ以上は舌が届かない。

「……はあっ」
「苦しいか? 手伝ってやろう」

 マスターが姿勢を変えて、僕の方に腰を押し付けてきた。
 口の中にねじ込まれてびっくりしたけど、頑張らなきゃって思うほうが大きかったから。

 口の中にいっぱいになってるマスターを、一所懸命に舐めて、咥えて、吸った。

「ン……そこ……もっと舌先を使って……」

 どうやったらいいかわからなかったけど、マスターが教えてくれることをよく聞いて。
 マスターによくなってもらおうとそればっかり考えて。

 頑張ってはむはむしてたら、マスターの手が太腿の内側を撫でた。

「んぐぅ!?」
「こら、歯を立てるなよ」

 すべすべと手が動いて、それからまた、一番恥ずかしいところに滑り込む。

「んーっ!」

 体をよじっても、胸の上にはマスターが馬乗りになっているし。
 歯を立てちゃいけないから、頭も動かすことはできないし。

 結局ほとんど無抵抗のまま、マスターの指がナカに入ってくる。

 一気にえぐりこまれて。

「んんんーーーーっ!!」

 体を震わせて、感覚に耐える。
 びくびくと魚のようにはねる体を無視して、マスターは乱暴に指を動かす。

 くちゅ、くちゅ、とイヤらしい音が響いて。
 それが僕のせいだと気付く。

 涙をためて、ひたすらマスターのものを咥える。

 恥ずかしくて

 熱くて

 嬉しくて

 欲しくて

 気持ちよくて

 苦しくて

「オビ=ワン」

 深い声で名前を呼ばれたら、心と体が同時にきゅっとなった。


 胸の上が軽くなって、口が解放される。

 僕のナカを掻き回していた指も、するりといつの間にか抜かれている。

「ぷはぁ……はあ……はあっ……」

 空気をいっぱい吸いこんで、体をよじる。
 マスターは僕の両足をもう一度大きく開いて、僕の顔を覗きこんだ。

「いいかな、オビ=ワン?」
「ますた……?」

 頭が熱くて何のことだか分からなかったけど、僕はうなずいた。
 いやなことなんて何にもなかったから。

 マスターは満足そうにうなずいて、それから僕に熱いものを押し付けてきた。

 すごく熱い。
 それに……大きくて。

「はっ……ますた……」
「挿れるぞ」

 マスターが力任せにそれを押し入れてきたとき、信じられなかった。
「ま、マスターッ!だめっ!」
「何故だ?」

 でもマスターは止める気なんか全然ないらしく、そのまま力を込めて僕に入れて来る。

「だって、こんなおっきいの……入ら……ないっ!」
「ふふふ……そうか……そんなに大きいか」

 なんか知らないけどマスターは機嫌がいい。
 でも全然止めてくれない。

 体が引き裂かれる。

「……っ!」
「リラックスしろと言っただろう。そう力を入れるな」

 そんなこと言われたって、無理ですマスター!

 だって本当に大きくて、コップか花瓶でもねじ込まれているのかと思った。

(あとでマスターにそう言ったら「それは誇張が過ぎる」と言われた。でも本当にそれくらいに感じた)

 いつまで我慢しても、まだ奥まで入ってくる。
 苦しくて、痛くて、僕は思わず悲鳴をあげた。

「ま、ますたぁっ!」
「まだだ」

 マスターも苦しそうな息を吐いて、僕の腰を抱く。

 もう必死で耐えるしかなかった。

 でも、不思議と嫌じゃなかった。

 マスターが僕のナカに入ってるんだと思うと、泣きそうなくらい嬉しかったから。

「ほら、全部入ったぞ」

 マスターがそう言って僕の額の汗をぬぐってくれた。

 目を開けると、マスターの顔がすぐ眼の前にあって。

 笑ってくれた。

「は…い……マスター」

 僕はこくんとうなずいた。

 笑おうとしたけど、さすがにうまくできなかったと思う。

「そうか」

 マスターはもう一度笑って、ぐっと腰に力を入れた。

「うあっ」

 ぎしぎしと体がきしんで、ぶつかり合う。

 マスターがそこにいる。

 僕の体のナカにもいる。

 僕の眼に映っている。

 ああ、僕の両手が自由だったら。

 マスターの体がここにあることをもっとたくさん確かめられるのに。

 後ろで縛られた手が恨めしい。

 でもそのもどかしさも僕は心のどこかで喜んでいる。

 マスターによって拘束される喜び。

 そのことをマスターは知っている。

「あああっ」

 マスターの動きが次第に速くなってきて、僕の声も抑えられなくなる。

 激しくなる動きにあわせて、体の中から知らないものが溢れてくる。

 ひとつになる喜びと。

 ナカをこすられる快楽と。

 今まで知らなかったものが……僕の中で目覚める。

「マスタ……マスタぁっ!」
「ん……オビ……ワン……」

 ぐちゅ、くちゅ。

 ずっ、ずちゅ……。

「ますたぁ……」
「ほら、聞こえるか。お前のイヤらしい音だ」

 くちゅくちゅ、ぐちゅ……っ。

「あ、ああっ……」
「感じているな……淫乱なパダワンだ……んん?」

 腰を抱えられて、乱暴に前後にゆすぶられて。

 ぐちゅぐちゅと音がする。

「い、いやっ、ますたぁ……」
「イヤじゃないだろう?」
「ああっ……い……イヤじゃないです……」

「なら、何だ?」

 意地悪く聞くマスターの低い声が、堪らなく気持ちよくて。





「気持ちイイです……あう……っ……マスター!」

 恥ずかしいことを大声で叫んでしまう。




「ふふ……こんな風に尻を貫かれて、か?」

「あああ……そ、そうです……くふぅ……」

 自分から腰を押し付けて、マスターのものをぎゅっと締め付ける。

 マスターがイヤらしいことを言うと、気持ちよくなる自分が恥ずかしくて。

 でも、恥ずかしいことがこんなにも気持ちいいなんて!






「あっあっあっ……」

「ん……オビ=ワン……」

「い、いやっ……あああ……だめ……っ」

「ああ、分かっている」

 僕もマスターも、もう互いの体の熱さに耐えきれなかった。

 だから、2人で。

 一緒に。





「ますたぁあああぁーーーーーっ!」

「オビ……ワン…………」




 体が弾けたように感じた。





 あとは……よく覚えてない。











 目覚めたらマスターのベッドの中だった。
「おはよう。オビ=ワン」
 見るとマスターが横に寝ていて、僕の顔をじっと見ている。

「うわっ、まままマスターっ!」
「そんなに驚くな。どうした? 悪い夢でも見たか?」
 そう言われて、はっと気付く。
「ゆ、夢……!?」

 今までのは全部、夢!?

 ほっとしたんだかがっかりしたんだか、なんだかよく分からないけどとにかく脱力。今までのが全部夢だったなんて。
 がっくりと枕に頭を沈める僕を見下ろして、マスターがくすくすと笑った。

「さて、オビ=ワン。どういう事か説明してもらうかな?」
「はい?」
 僕はがっくりきてたので、マスターの声がちょっぴり怖いことにも気付かなかった。

「私に一体何を飲ませたのか、説明してもらおうか、と言っているのだ」
「!?」
 驚いて飛び起きたら、僕もマスターも……何も着ていなかった。裸……だ。
「まままままますたーーーーっ!?」
「だからお前は私に何を飲ませたんだ? 頭が痛くてかなわん」
「マスター!? 大丈夫ですかッ!?」
「二日酔いだな。でも昨日は酒を飲んだ覚えはない」
 だから何を飲ませたのか教えてもらおう、とマスターはすごんだ。
 昨日のことは全部本当で、マスターは二日酔いで、僕は裸で……。僕はひたすら混乱していて、マスターに答えることすら忘れていた。

「ああああっ僕は僕はッ!」

昨日、マスターとあんなことしちゃったんだ!

「ふにゃああああああーーーーーーっ!」
「落ち着け」
 マスターの一撃がぺしっと僕の頭に加えられる。
「ふにゃあ……」
「いいから落ち着け。まったく」
 独りでさんざん騒いでマスターになだめられて。僕は正直に、手に入れた媚薬(さすがにブルックの名は伏せた)をお茶に入れたと答えた。マスターはため息をついて、苦い顔をした。

「マスターに薬を盛るパダワンがどこにいる?」
「うう……ゴメンナサイ……」
 僕は泣きそうだった。
「捨てないで……マスタぁ……」
「どうしようかな。こんな行いの悪いパダワンは砂の惑星にでも捨ててくるか」
「!?」
 その言葉だけで僕はもう涙をぼろぼろこぼしていた。
「ご、ごめんなさいマスタぁ……許して……許してください……」
 すがりついて泣く僕をマスターはしばらく眺めていたけど、そのうち苦笑して僕の頭を撫でてくれた。

「どうしてこんなことをした? 私としたかったのか」
「ま、ますた……マスターと……したかったんです……」
「あんなので良かったのか?」
 そう言われて僕の胸はずきんと痛む。
 薬で変わってしまったマスターとあんな風にめちゃくちゃになって、それが僕の望み?

「……違います」
「そうだろう? 私だってあれでは納得いかない」
 マスターは腕を組んで僕を見た。

「どうしたい?」

 僕はマスターを見上げて、大好きな顔を見上げて、じっと見つめて。

 それから僕が本当にしたかったようにした。


 マスターの首に腕を回して、じっとマスターの顔を見つめて。
 たくさんたくさん。
 充分だって思うくらい見つめたら、そっと唇を重ねた。

 マスターの唇はあったかくて優しかった。

 マスターの太い両腕が僕をしっかりと抱き締める。
 僕らは求め合って、互いに深くキスをした。

 舌を絡めて、唇を甘く噛んで、腕で抱き寄せて。

「ン……ますたぁ……」
「私だって……こうしたかった……オビ=ワン」
 なのにお前があんな風にしてしまったんだぞ?とマスターがにらむ。

「ごめんなさい」
「やってしまったものは仕方ない。だからオビ=ワン?」

 マスターは僕の体を軽々と抱き上げ、膝の上に載せてくれた。

「もう一度、きちんとやりなおさないか?」

 僕はもちろん、大きくうなずいて。



 僕たちは本当にやりたかったようにやりなおしたんだ。



<<END>>



またまたやってるだけクワオビ(しかも夢オチ?)。つーかさー、クワオビってやるしかないって。他にやることないって(ヒデェ)。ごめん、僕のクワオビはやるしかありません。けっこうカワイイ感じのクワオビとかで短いの書いてる方いらっしゃいますけど、羨ましすぎます。アナオビとかならちょこちょこアイディアが出てくるんですが、クワオビにかんしてはもう、単純。やるしかない。むしろやりたい。

で、ひとりえっちオビです。作成時のファイルタイトルは「オビの抜きネタ」でした。相変わらずミもフタもないファイル名をつけますね私も。オビたんはこんなふーにマスターにされたいのに、ジェントルメンなクワイ師匠はそんな素振りも見せないので、オビたんの自己嫌悪は日に日に募るばかりなのです。でも本当はクワイさんだってポーカーフェイスの裏でオビたんに欲情しまくって大変なのです。「オビ=ワンを劣情の餌食にしてはいけない!」と毎日苦悩しているのです。なんだ、相思相愛じゃん! 良かったねクワオビ!