かわいいぱだわん     BY明日狩り

 昔々、遙か銀河の彼方に、ジェダイという修行僧の集団がありました。
 修行し、業を極めた者はマスターの称号を受けました。
 しかし修行僧なので恋愛は許されていません。そして、ジェダイの才能は決して遺伝しないのです。

 だからジェダイは、才能のある子供を宇宙中から捜し出してきて、自分の弟子にしました。
 息子を生み育てる代わりに、その弟子をわが子同様に育てて自分の業を伝えるのです。

 弟子は、自分の子供と同じ。
 そう、「赤ん坊の頃に」弟子を見出し、「赤ん坊の頃から」一人前になるまでマスターの手で育てる。それがジェダイの習わしでした。(←この辺、設定なので要注意)

 これは、そんな親子のようなある師弟の物語です。





***********************





 マスター・クワイ=ガン・ジンは激しく動揺していた。
 手の中に旧式の手紙を握りしめ、さっきからうろうろと部屋の中をうろついている。
「まさか……戻ってくるとはな……」
 そんなことをぶつぶつ呟きながら額に深いしわを刻んで、大柄のジェダイはそれこそ檻の中の熊のように右往左往していた。

 ソファの上でお絵描きをしていた幼いオビ=ワンは、大好きなマスターが右に左にうろうろするのをしばらくの間目で追っていたが、やがて不思議そうに首をかしげる。
「ますた、くまです」
「うーむ、まずい……絶対にまずいぞ……」
「ますたがくまです」
「どうする……逃げるか……しかしどこへ……」
 マスターの動きに合わせて右へ、左へ、オビ=ワンの目がうろうろと動く。この間寝るときに読んでもらった絵本の「くま、まちへいく」に出てきた熊はきっとこんななんだろう、とオビ=ワンは思った。

 普段なら「そーか私が熊のようだったか、はははオビ=ワンは可愛いことを言うなぁこのカワイコチャンめ」などと言いながらオビ=ワンを抱き上げて高い高いして頬ずりするくらいやりかねないのだが、今日のクワイ=ガンはそんなオビ=ワンの仕草にも気付かないほど焦りに焦っていた。

 原因は、手紙。
 紙にインクで書かれたそれは、古風にも蝋で封のされた封筒に入って届けられた。そういう奇特なことをする人物で、しかも封蝋に「D」の刻印がされているとなれば、もう開けずともその差出人は明白だった。
「マスター……ドゥークー……ッ!」
 震える手で開封すると、見覚えのある華麗な筆記体で「我が愛しの元パダワンよ」から始まる手紙が綴られていた。

 長期の任務で辺境へ赴いていたドゥークーがようやくコルサントへ戻れることになったので、その暁にはお前の所へ顔を出すぞ、ということらしい。
そして最悪なことに、「お前を驚かせようと思って、わざと時間のかかる方法で連絡したのだ。これがお前の手元に着いた頃には、私はコルサントに戻っているだろう」……と続いている。
「今、このコルサントに……奴がいる……」
 クワイ=ガンは渋面を作った。

 クワイ=ガンの師匠、マスター・ドゥークー。
 最強のジェダイの1人と言われている。
 その強さ、鋭さにはクワイ=ガン自身も正直まだ及ばないと思っている。
 しかし、世間的な評価はともかく、クワイ=ガンは彼が苦手だった。


 なにしろ、彼の元から卒業するまでの人生およそ20年間、クワイ=ガンはドゥークーのセクハラを受け続けてきたのだ。


 初めはもちろん、それがセクハラであることには気付かなかった。その知識がなかったのだから仕方がない。幼い頃は(今から思えば)過剰なまでのスキンシップに始まり、体の敏感なところを開発され、マスターの指をしゃぶることから舌使いを教えられ、それらが次第にエスカレートしてきて、ついにコトに至ったのは確か13歳の……いや、やめよう。
 とにかくそれと知らず過激な性教育を施され、それがセクハラだと判断できる年になっても関係は続いてしまった。どんなに拒否しようとも、口八丁手八丁でごまかされ、結局流されてしまう。
 ……いけないのは自分なのか、バカマスターなのか。さんざん悩んだものだ。

「あのド腐れマスターが……来る……」
 クワイ=ガンは汗ばんだ手に手紙を握りしめ、ぶるぶると震えた。
 どうしたらいいのだ。
 そればかりが頭の中を駆けめぐる。
 ジェダイマスターになってはや数十年。弟子もオビ=ワンで3人目だ。今更ドゥークーに会っても、たとえセクハラされようとも、もはや若者とはとうてい言い難いこの身に怖いことなどない。

 クワイ=ガンが怯えたのは、ドゥークーからの手紙に付け加えられていた一文だった。

「P・S。お前の可愛いパダワンに会えることをとても楽しみにしているよ」

 赤ん坊のオビ=ワンを見出してつれてきたのが、2年と少し前。そのときドゥークーは任務に赴いていてコルサントにはいなかった。だからクワイ=ガンの可愛い可愛いパダワンのことを、ドゥークーは見たことがないのだ。

 マスターがじっと立ちつくして動かなくなったので、オビ=ワンは退屈してソファから降りた。まだ重心が頭の方にあるため危なっかしい足取りで、とことこと歩いていくとだいすきなマスターの足に抱きつく。
「ますた?」
 上目遣いで名前を呼び、にこっと笑う。

 その天使の笑顔を上から見下ろして、クワイ=ガンは一瞬意識を失いかけた。


 こんな愛らしいパダワンを、あの変態に見せるわけにはいかない!!


「おび=わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ!!」
 感極まってオビ=ワンを勢いよく抱き上げ、頬ずりする。
「ますた、おひげいたいです」
「あああああ可愛い可愛いッ私のオビ=ワン!」
「ますた、いたいです」
 ちょっと迷惑そうに、でも嬉しそうに言うオビ=ワンに、クワイ=ガンの心拍数は上昇の一途をたどる。

「ああ愛らしいこのパダワンときたら! こんな可愛いお前をあの変質者が見たらどうなることか! よからぬコトをするに違いない! いや、そうでなくとも奴の想像の中でオビ=ワンをどうにかされるだけでも嫌だ! いや、あいつの腐った目にオビ=ワンが映るだけでも嫌だ! ああっ私はどうすればいいんだ!?」
「ますた」
「ああああああっ可愛いっ可愛すぎるっ」

 動揺し、すっかり錯乱するクワイ=ガンであった。

「ドゥークーの目にお前が映ると考えただけで……私は……私は……気が狂いそうだっ!」
「ますた」
「目に映るだけで……目に……?」
 そこでクワイ=ガンははたと何かに思い至ったらしい。オビ=ワンを床に下ろしてやると、勢いよくクローゼットの扉を開け放った。

「どこだ……確かここに入れておいたはず……」
 いつもならオビ=ワンが部屋を散らかすと叱るはずのマスターが、今はクローゼットの中身を部屋中にとっちらかしている。
「ますた、おかたづけです」
 オビ=ワンは飛んでいく帽子やマフラーをずるずると引きずって、クワイ=ガンに渡そうとした。

「あった!」
 大声を上げて、奥から大きなボールを取り出す。いや、よく見るとそれはボールではない。かぼちゃだ。
「あ、おびのはろいん!」
 オビ=ワンも声を上げて駆け寄る。それは、去年のハロウィーンにオビ=ワンにかぶらせたかぼちゃであった。小さなオビ=ワンには少々大きくて重すぎる代物だったが、それをかぶってマスターと一緒に広場に遊びに行ったことをオビ=ワンは今でも良く覚えている。

 奥からはさらに、そのときに着た白いだぶだぶのスモックと天使の羽根も出てきた。楽しい思い出の品を見つけて喜ぶオビ=ワンに、クワイ=ガンはさっそくそれらを着せてやる。
「ますた、きょうもはろいん?」
「いや、違う。だが今日はハロウィーンの練習の日なんだ。だから早くこれを着なさい」
 適当にごまかしていそいそとスモックをかぶせ、羽根を着ける。もうその時点でたまらない愛らしさを見せるオビ=ワンに、クワイ=ガンの理性もくらくらとよろめいた。が、そんなことをしている場合ではない。もしかしたら毒マスターの魔の手がすぐそこまで近づいているかも知れないのだ。

「さ、あの時と同じようにこれをかぶるんだ」
「あいっ」
 目鼻をくりぬいたかぼちゃをかぶせると、可愛らしいハロウィーンのジャック・オ・ランタンができあがった。


 さて、ここからが重要だ。
 クワイ=ガンはしゃがんでかぼちゃと視線の高さを同じにする。
「さて、オビ=ワン。お前はもうオビ=ワンではない。ジャックだ」
「いえす、ますた」
「だから私がオビ=ワンと言っても、決して返事をしちゃいけないぞ」
「いえす、ますた」
「それから、ジャックは静かなお化けなんだ。笑ったりはするが、しゃべったりはしないんだぞ」
「そうなの?」
 重そうな頭をかしげるオビ=ワンに、クワイ=ガンは真剣な目で頷く。

「そうなんだ。だからお前はジャックになりきって、静かにしてなきゃいけないぞ。私がいいと言うまで、何もしゃべるな」
「いえす、ますた」
「よし」
 深く頷き、ジャックの手を取る。ジャックは不思議そうにクワイ=ガンを見上げて言った。

「ますたははろいんじゃないの?」
 そう言えば去年のハロウィーンには、クワイ=ガンも仮装をしたのだった。そのことをオビ=ワンは言っているのだ。
「私はいいんだ。今日は練習だから、お前だけで」
「いえす、ますた」
 素直に納得するオビ=ワンを今すぐ抱きかかえてほめ倒してやりたい衝動に駆られるクワイ=ガンだったが、少ない理性を総動員して自制する。

「さて、こうなったらこちらから……」
 コルサントに帰っているであろうドゥークーを探して、こちらから攻撃を仕掛けてしまえばいい。そう思ったクワイ=ガンがジャックの手を引いて一歩扉の方へ踏み出した瞬間。

 ぴんぽ〜ん。
「クワイ=ガン、いるか。私だ」

(げっ)
 オートにしてあるインターホンを通じて聞こえてきたのは、忘れもしない、忘れたくとも忘れられない、マスター・ドゥークーの声だった。

 予想以上に素早いドゥークーの行動に、心の準備ができていなかったクワイ=ガンは激しく動揺する。が、賽は振られたのだ。小さなジャックの手を握りしめて、勇気を振り絞る。

「マスター・ドゥークー。今開けます」
 重い頭をふらつかせるジャックに気を遣いながら、クワイ=ガンは扉を開けた。
「おお、クワイ=ガン。久しいな」
「マスターこそお変わりなく」
 辺境に追いやられていたとは思えないほど元気そうなドゥークーの姿に内心うんざりするが、決して顔には出さない。にこやかに愛想笑いを作りながら、クワイ=ガンは当たり障りのない世間話から切り出そうとした。

「マスター、今回の任務は随分長かったですね」
「おおっ、これが噂のパダワンか」
 しかしクワイ=ガンの牽制球はものの見事に無視され、ドゥークーは後ろにちんまりと控えていたジャックに目をやった。

「お前がパダワンを取ったと聞いてな、どんなものか早く見たいと思っていたのだよ」
「そ…………そうですか」
 頬をひくつかせるクワイ=ガンになど目もくれず、ドゥークーは嬉しそうにジャックに近づいた。ジャックはクワイ=ガンの手を握ったまま、不思議そうに壮年の来客を見上げている。
(あああオビ=ワン、その上向き加減な仕草はいかん……可愛すぎる……)
 やきもきするクワイ=ガンを尻目に、ドゥークーの興味はすっかりジャックに向いてしまったようだった。にこやかに微笑みながら、少し腰をかがめてジャックに見入る。
 その間に割って入り、クワイ=ガンはジャックを隠すように立ちふさがった。きつい目で見下ろすクワイ=ガンににやりと笑みを返し、ドゥークーは腰を上げる。

 このままよけいなことを聞かれないうちにさっさと追い返してしまいたいところだ。
「見ての通り、かぼちゃ星人です。名前はジャックです」
「かぼちゃ星人……か?」
「そうです。かぼちゃ星から私が連れてきました。ジャックです。見ての通り可愛くも何ともないかぼちゃ顔です」
 だからとっとと帰れ、と続けたいところだがさすがにそうはいかない。

「なるほどな。前の弟子があんなことになってしまって『もう弟子は取らない』と言っていたはずのお前が新しい弟子を見つけてきたというので、非常に興味があったのだよ。それがかぼちゃ星人とはな」
「ええ、この子には才能がありましたから。弟子を取るのに、外見とか、そんなのぜんっぜん気にしないですから」
「そうなのか?」
「そうなんです」
 きっぱりとはねつけてにべもない。ドゥークーは楽しそうに微笑みながら、またしてもクワイ=ガンの後ろに隠れているジャックに視線を向けた。

「初めまして。私はお前のマスターのマスター、ドゥークーだよ」
 ジャックは返事をしようとして息を吸い、それから慌てて口を塞いだ。
(じゃっくはしゃべらないって、ますたが)
 マスターの言いつけを思い出したオビ=ワンは、かぼちゃの中で息をひそめた。しかしお客様にはあいさつしなければならない、とも教わっている。
(どうしよう……そうだ!)

 困ったオビ=ワンは、だぶだぶのそでから出た指先をおひざの上で重ねると、ぺこりとお辞儀をした。
(あああああかわいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!)
 クワイ=ガンが頭の中で絶叫する。天使の羽根を着けた小さなオビ=ワンが、教えられたようにお辞儀をしたのだ。しかも小さなおててをそろえて、お行儀良くできたのだ。今すぐ抱きしめて高い高いして頬ずりして褒めちぎってやりたい衝動に駆られるが、ドゥークーの手前そういうわけにもいかず、クワイ=ガンはぐっとこらえた。

 するとそのとき、お辞儀をして重い頭がぐらついたジャックがよろけそうになった。
「おっと、危ない」
 クワイ=ガンとドゥークーが同時に手を出して、ジャックを支える。鋭い視線を突き刺してくるクワイ=ガンなど眼中にないドゥークーは、まだよろよろしているジャックを支えて楽しそうに言った。

「いやいや、なかなかどうして可愛らしいじゃないか、なあクワイ=ガン?」
「いえ、でもしょせんかぼちゃ星人ですから」
「いやいや、可愛いぞ。うん、非常に良い」
 何が良いんだ!?と問いつめたくなるクワイ=ガンだったが、うんうんと機嫌良く頷いているドゥークーによけいな横やりを入れるのは危険だと本能が言っている。
「愛らしいパダワンだな。よしよし」
 しゃがんでジャックに視線の高さを合わせ、顔をのぞき込んで楽しそうに笑っている。


「さて」
 ひとしきりジャックの可愛さを堪能したらしいドゥークーは、やれやれと腰を上げた。
(よし、帰れ)
 心の中ですかさず突っ込む。
 立ち上がったドゥークーはクワイ=ガンに向き合って、にこやかにこう言い放った。




























「それで、オビ=ワンという人間のパダワンにはいつ会わせてもらえるのかな、私の可愛い元パダワンよ?」











「なっ」
















 言葉を失うクワイ=ガンを面白そうに眺めて、ドゥークーは腕を組んだ。真っ白になった意識の中から甦ってきたクワイ=ガンは、つかみかからんばかりの勢いでドゥークーに言い寄る。

「そそそそそその名前をどこでッ!?」
「いや、なに。ジェダイ公報に載っていたからな。帰りの船の中で読んでいた」
 ドゥークーが見せたデータパッドのジェダイ広報には「師弟一覧表」が載せられていた。そこに最近の写真付きで「マスター:クワイ=ガン・ジン。パダワン:オビ=ワン・ケノービ」と書かれている。

「いやあ、可愛らしい子供じゃないか。オビ=ワンとやらは」
「むぐぐぐぐぐ……」
「おやおや、どうした。顔色がすぐれないぞ?」
 わざとらしく眉をひそめ、心配そうな表情をする。これが己のマスターでなければ今すぐライトセーバーの錆にしてくれるところだ。
(注意:己のマスターでなくともむやみにライトセーバーを振るってはいけません)

「お前のマスターはおかしな奴だな、オビ=ワン・ケノービ?」
 ドゥークーはくすくすと笑いをかみ殺しながら、ジャックの頭を持ち上げた。ずぼっと音がして、小さなオビ=ワンの顔が露わになる。
「!!!!!!!」
「暑くなかったかな、オビ=ワン・ケノービ?」
 名指しで問われて、オビ=ワンは戸惑った視線をマスターに向けた。何もしゃべるな、と言われているのだ。

 ばれてしまった以上、そんな策など何の意味もない。
 クワイ=ガンは苦虫を噛み潰したような顔で、パダワンに頷いてやった。オビ=ワンはこくんと頷くと、ドゥークーに向かって返事をする。
「暑くないです」
「そうかそうか、オビ=ワンは良い子だな」
「はーいっ」
 褒められて喜ぶパダワンの素直さにドゥークーの顔もいっそうほころぶ。

「オビ=ワン、修行は楽しいか?」
「たのしいでーす」
「マスターと何をするんだ?」
「えーと『くま、まちへいく』をよんでもらいます」
「そうかそうか、絵本を読んでもらうのだな」
「それからますたのおかおをくれよんでかきます」
「そうかそうか、似顔絵を描いてやるのだな。オビ=ワンはちゃんと答えられるんだな。良い子だな」
「はーい!」
 嬉しそうに両手を挙げるオビ=ワンに、クワイ=ガンは失神寸前だった。

 そんな可愛い顔をしたら、このド腐れ毒マスターに悪いことをされてしまうじゃないかっ!!!

 しかしマスターの心の中などまったくさっぱり分かるわけもないオビ=ワンは、優しいおじいちゃんが自分のお話を聞いてくれる、という認識しかないらしい。「ますたとしゅぎょうすること」や「おてつだいができること」や「おもらししないでといれにいけること」を嬉々として報告している。
「そうかそうか」
 ドゥークーも楽しそうにそれをいちいち頷きながら聞いている。

 ……なんか、悔しい。
 心配と同時に、クワイ=ガンの心には嫉妬が湧き上がる。こんな風に可愛いオビ=ワンと話していいのは私だけなんだっ!!

「マスター、もうカウンシルへの報告などはすまされたのですか?」
 悔し紛れに呟いてみると、ドゥークーはおお、と思い出したように声を上げた。
「いかんいかん、それを忘れていた。ちょっと寄るつもりが長居してしまったな」
「かえっちゃうの?」
 オビ=ワンがちょっと寂しそうに眉を寄せる。
(そんな顔するなオビ=ワンっ!)
 嫉妬に駆られるクワイ=ガンをよそに、ドゥークーはオビ=ワンの頭を優しく撫でて言った。

「また遊びに来るから、良い子で待っているんだぞ?」
「あいっ!」
「次に来るときは土産を持って来ような。」
「はぁーいっ!」
 両手を上げてぴょんぴょん跳びはねるオビ=ワンの背中で、天使の羽根飾りが一緒に揺れる。

 こんなに可愛いオビ=ワンの心をまんまとキャッチしてゲットするとは!!

「では、邪魔したな。また近いうちに来るから」
「ニドトコナイデクダサイ」
「ん? 何か言ったか?」
「イエ、ナンデモアリマセン。オマチシテオリマス」
 脳の血管が数百本ほどぶち切れてしまっているクワイ=ガンは、これ以上ないほど他人行儀にドゥークーを送り出した。

「ますた」
 ドゥークーの去ったあと、オビ=ワンがくいくいっとローブを引く。
「またくる?」
「……らしいな」
「わぁ〜い!」
 無邪気に喜ぶオビ=ワンの可愛さにくらくらしながら、正常な思考回路を破壊されたクワイ=ガンは心の中で思っていた。

(やっぱり毒マスター、早く始末しておかなければいけないかも知れない……)

 ……人知れずダークサイドに引かれるクワイ=ガンであった。




<<END>>



というわけで、「赤ちゃんからパダワンを育てていたら」設定のD/Q前提Q/Oです(大爆笑)。無駄にD/Q設定です。無駄すぎます。そして設定もパクリです。「Lingua Franca」の服部亘様が連載されている「たまひよ」シリーズの設定をお借りしました。むしろそこのイラストを元に書かせて頂きました。こちらの「たまひよ」シリーズの大ファンで、暇なときに美麗イラストを思い出しては独りで悦っているのですが(変態)、「おじいちゃんとか出てきたらどうだろう?」という思いつきがあれよあれよという間にこういうストーリーになりました。
2〜3歳児の知能レベル(笑)がどのくらいか分からず、育児サイトなどを覗いて研究していた私はちょっとアホでしたね。身近に赤ちゃんがいたことがあまりなくて。ちょうどオムツが外れたり自己主張し始めたりたくさん言葉を覚えたりする時期らしいのですが、なにせ付け焼き刃なので赤ちゃん描写がぬるくても許してあげて下さい。
で、服部様に許可を戴いたので「たまひよ」のイラストを頂戴してきました↓。ちょお可愛いったら!! 去年のハロウィーンのTOPだったんですが、初め「あれ〜クワイさんしかいないや」とかのんきに思ってたんですよ。で、よくよく見てみたら、「え……え……? このクワイさんが愛しそうに手を引いている幼子は誰!?」と気づき、萌え萌え! 服部様、掲載許可ありがとうございます。あといつもいつもすばらしいイラストをありがとうございます。大ファンです。