みどりのまち     BY明日狩り

 私の運命が変わった日。
 あなたがあの子供を連れてきた日。
 あなたのパダワンであった時代が終わりを告げた日。
 あなたを永遠に。

 失った日。



 この星に来ると思い出す。
 すべてが終わりに向かって崩れ落ちたあの日は、ここから始まった。
「…………マスター」

 もうあの日は遠く、オビ=ワンの髪はその年月を示すように白くなっていた。
 激動の運命に翻弄され、それでも自分にできる限りのことをしてきて、
 その果てに砂漠の星に独り、ただ独り、立ち尽くしている。

 

 あの人を思うと、自分は何一つできなかったのだということを痛感する。
 意思半ばにして倒れたあの人が、自分に託したすべてを。
 すべてを自分は、全うできなかったのだと思う。

 何もできない思いに苛まれて。
 会いたい思いに駆られて。

 だからここにいて、あの人を思うだけ。







 ふと思う。
 ここで終わった日々が。
 もう一度やり直せるのなら。

 あなたの背中を追いかけて過ごしたあの時間が戻るだろうか?
 あなたを支えにして、あなたを支えて、生きていたあの頃が甦るだろうか?

 
 もう一度あなたの大きな背中に向かって、
 誰より好きだと伝えたい。
 あなたのすべてが今でも愛しいと、
 それを伝えたい。

 頭を振っても。
 振り払えない思いが心に。


「いつか」
 オビ=ワンは自分に言い聞かせるように呟く。

「いつか会えるから」

 それがいつのことだかわからないけれど。
 いつか必ず、あなたに再び会える日が来る。

 その日まで。
 今はただこの砂漠の星にたたずんでいる。
 その日が来るまで。
 いつまでも待っている。












 不毛の大地を遠く眺めて、思い出す人がいる。
 目を閉じて、胸の痛みを迎え入れる。

 あの頃はただ若すぎて、きっと自分のことに精一杯で、
 お前の涙に気付いてやれなかったのだと思う。
 自分の孤独に打ちひしがれて、
 お前の傷ついた心を癒してやれなかったのだと思う。


 いつかこの不毛の砂漠に緑が満ちるときが来るだろうか。
 そのとき、お前の心にも恵みの雨が降り、お前は孤独から癒されるのだろうか?

 荒み、乾き、冷え切ったお前の影を思い出す。



 今ならきっと、お前を解ってやれると思う。
 今ならきっと、お前と共に生きていけると思う。
 お前を愛していることを、ちゃんと伝えて。
 お前は独りではないと、優しく教えて。

 それがいつのことだか分からないけれど。
 いつか必ず、お前に再び会える日が来る。
 
 その日まで。
 今はただこの不毛の土地にたたずんでいる。
 その日が来るまで。
 いつまでも待っている。





 「その日」が来るまで。
 この砂漠の星で、彼は待っている。


<<END>>



「緑の街」 作詞 小田和正

忘れられない人がいる
どうしても会いたくて
またここへ来る 思い出の場所へ

その人のために今は 何もできない
どんな小さなことも あんなふうに

もしできることなら あの日に戻って
もういちどそこから 歩き始めたい
誰より君のことが 君のすべてが
今も好きだとそれを 伝えたい

届け この想い あの日の君に
届け この想い 今の君に
いつかきっと会える その時まで
僕はここで待ってるから
いつまでも待ってるから


傷つけた人がいる
ただ若すぎたから
流れた涙も 気づかないで

緑が街を やさしく包む頃は
別れた時の君を 思い出す

届け この想い あの日の君に
届け この想い 今の君に
いつかきっと会える その時まで
僕はここで待ってるから
いつまでも待ってるから


ブラウザのBACKでお戻り下さい。