| 「マスター」 「ん?」 あなたは振り返って僕を見て、笑ってくれる。 ずいぶん変わったね、僕らは。 「頼まれていた部品、探しておきましたから。コレ」 「ああ、ありがとう。 なかなか私じゃ型の合うものが見つからなくてね」 「だってマスター、そんなにジャンクショップとか 通ってないでしょう?」 僕が差し出した金属部品をあなたは受け取って、 まじまじと太陽の光に透かして見る。 何が見えているのかな。 僕も一緒になって覗きこむけど、 そこにはただの機械の部品があるだけ。 あなたはそれをポケットに入れて、それからもう一度。 僕に笑顔を見せる。 「ありがとう。確かにこれだよ。よく探してきたな」 あなたは普段、あんまり僕を褒めてはくれないけれど。 こんな時は手放して喜んでくれるから。 「いいえ、機械のことなら任せて下さい」 「ああ、こればっかりは負けを認めるよ、アナキン」 そう言って僕の頭を撫でてくれる。 あなたが僕を認めてくれる。 僕らは変わったね。 嬉しくなったから。 僕は調子に乗って。 「ね、オビ=ワン」 あなたはちょこっと顔をしかめて、 でも困ったように笑って。 「何だ?」 名前を呼んでも叱らない。 前は「マスター」って呼ばないとすごく怒ったくせにね。 「キスしても、いい?」 こう言うのは、僕の意地悪。 あなたは困って、戸惑って、横目で僕を見ている。 「いいよ」なんて、あなたには言えないもんね。 でも、怯えないでよ。オビ=ワン。 僕のことをもっと、その胸に抱いてよ。 そうして今ここにある体温を、確かめてよ。 「ね、オビ=ワン」 抱き締めて、不意にキスを奪う。 僕が勝手にするなら、あなたに落ち度はないでしょう? あなたに逃げ道をあげるから。 言い訳だってあげるから。 だから僕とキスをしよう。 「オビ=ワン……」 首に回した手でもう一度あなたを抱き締めて。 あなたの名を呼ぶ。 他ならぬ僕の声で、あなたを呼ぶ。 「アナキン」 あなたの困った顔が、 それでも前とは違って柔らかい表情だから。 僕はもう一度、キスをした。 「クワイ=ガンのこと、想っててもイイよ」 「!?」 その名を出すと、さすがに慌てて。 腕の中から逃れようとするあなたを離さない。 いいよ、いくらでも迷っていいよ。 「その代わり、僕の腕の中にいてね」 「アナキン……」 僕を見つめて、 うつむいて、 居心地悪そうに身をよじって。 そんなこと、分かってるよ。 あなたの心から去らない影のこと。 過去から進めないあなたのこと。 それから、僕に惹かれるあなたのことも。 独りにさせないから。 僕の腕の中においでよ。 過去も、涙も、くじけた夢も。 全部抱えたままでここへおいでよ。 抱き締めて。 もう一度キス。 あなたは素直に目を閉じた。 「愛してる、僕のマスター」 「…………ん」 小さな返事。 あなたは心に影を抱えて。 それでも僕のことも考えてくれると、己惚れていい? 僕らの道は少しずつ重なってきて。 僕らは前よりぶいずん、変わったみたいだった。 |
| 「愛を止めないで」 作詞 小田和正 やさしくしないで 君はあれから 新しい別れを おそれている 僕が君の心の 扉をたたいてる 君の心が そっと、そっと 揺れ始めてる 愛をとめないで そこから逃げないで 甘い夜は ひとりで居ないで…… 君の人生が ふたつに分かれてる そのひとつがまっすぐ 僕の方へ なだらかな明日への 坂道を駆け登って いきなり君を 抱きしめよう 愛をとめないで そこから逃げないで 眠れぬ夜は いらない もういらない…… 愛をとめないで そこから逃げないで 素直に涙も 流せばいいから ここへおいで くじけた夢も すべてその手に かかえたままで 僕の人生が ふたつに分かれてる そのひとつがまっすぐ…… |