なにしてるんだ?とギアッチョに訊ねられてリゾットは顔を上げた。
 その手には真新しいテーブルクロス。

「今日、常連さんの一人が誕生日らしくてな。今夜ここで御友人と食事をしてくれるのだと」
「ほー、それで?」
「せっかくなんだ、祝いたい」

 用意を進めるリゾットがあんまり楽しそうで、ギアッチョもつられて口端を上げた。

「オレはなにすりゃいい?」
「そうだな……ケーキを作ってくれないか、とっておきのだ。彩り豊かなのがいいな」
「了解、任せとけ」


 誕生パーティーの準備は着々と進んでいた。
 最初からその様子を見ていた客のイルーゾォの「装飾が少ない」の一言で、リゾットは保育士であるこれまた常連客に連絡(連絡先をギアッチョに渡していたのだ。決してそんな店ではない)を取った。彼は事情を聞くと、色紙で輪繋ぎを作ってやると笑った。



 そして、夜。
 ギアッチョのペペロンチーノと引き換えに渡された鎖飾りをとりつけて、彼らは待つ。
 階段を降りて扉を開けたその人を迎えたのはクラッカーの弾ける音。

「ようこそ、カフェ・アンチーカへ。そして、Buon Compleanno!」

 デザートとして運ばれたギアッチョ渾身のケーキは、鮮やかな果実が宝石のようだった。そのケーキは居合わせた他の客にも同様に配られた。

「ラッキーだったねえ、ソルベ」
「おい、ペッシ、オレのイチゴ一個くれてやる」
「ありがとうごぜえやす!」

 笑顔が店中に伝染する。


 髪を短く刈り上げた男が不意に間延びした声を上げた。

「歌が足りねえなあ〜〜、歌わねえか?」

 その提案にリゾットが目を細める。

 誰からか始まった手拍子に乗せて、大合唱になった。


 リゾットの満足げな笑みをギアッチョは確かに見た。カフェ・アンチーカは幸せだった。


【END】






なんという幸せいっぱいのアンチーカ夢小説ッ!! 主人公が自分だと思って読むとディ・モールト幸せになれる! ……これがドリー夢ってやつか……。二次元に入るのは案外簡単ですね。脳内でどうとでも出来るんだ……(ほんわか)。あーアンチーカの常連になって誕生日パーティをアンチーカでやりたーい。そんでバリスタとか他の客にサプライズしてほしーい。夢のような小説をありがとうございました!
By明日狩り  2013/04/25